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(5)健診 津山中央病院健診センター部長兼健診センター長 岩井伸夫

2階に健診センターがある津山中央病院の津山中央健康管理センター

健診センター内のラウンジ

岩井伸夫健診センター部長兼健診センター長

 健診(検診)や人間ドックは、潜在的な疾病、病変を早期に発見し、早期治療につなげることにより、治療成績が良くなることを期待して実施されます。現在、日本ではさまざまな健診が行われていますが、当院健診センターでも特定健康診査(特定健診)や生活習慣病予防健診、人間ドック(一般・標準コース)、放射線画像によるPET(ペット)/CT検査、磁気共鳴画像による頭部MRドック、各種がん検診をはじめ、事業所からの依頼による人間ドックや1日半のコースとなるスーパードックなどを実施しています。また、これらの健診コースに追加するオプション検査として、肝炎ウイルス検査、胸部CT検査なども実施しています。

特定健診とメタボリックシンドローム

 日本では過食、運動(身体活動)不足を背景にして、肥満者が増加しています。肥満すなわち内臓脂肪の蓄積が糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧を重複して引き起こした状態をメタボリックシンドロームとよび、虚血性心疾患(心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳梗塞など)、腎不全などの重篤な病気に発展することが問題となります。肥満者の増加する中で、このような病気の発症を防ぐため、メタボリックシンドロームに着目した健診として、2008年から特定健診が40歳から74歳の人を対象に行われています。

 メタボリックシンドロームの原因となる内臓脂肪を減らすためには、食事、運動などの生活習慣を変えることが必要です。特定健診では、腹囲などの健診結果から保健指導の対象者を選び出し、保健師や管理栄養士らが生活習慣改善のための支援を行うようになっています。これが特定保健指導です。

生活習慣病予防健診と胃内視鏡検査

 生活習慣病予防健診は協会けんぽが実施する健診ですが、おおざっぱには、特定健診に肺、胃、大腸、子宮、乳がんのがん検診などを加えたものが生活習慣病予防健診になるといってよいでしょう。この健診においても健診後、該当者に対し特定保健指導が行われますが、当院健診センターで受診された場合は、受診者の便宜のため、当日健診後に特定保健指導(1回目)を受けられるようになっています。

 最近、胃がん検診の検査として胃内視鏡検査を希望する人が増えてきています。胃内視鏡検査では疑わしい部位の胃粘膜を採取し、病理検査で悪性の有無をすぐ調べることができることと、胃エックス線検査よりも胃がんの発見率が若干高いことが利点です。

 また近年、胃内にすみついて萎縮性胃炎や胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の血中抗体の有無と、胃粘膜萎縮を反映する指標の血中ペプシノーゲン値との組み合わせにより、胃がんのリスクを推定することのできる胃がんリスク層別化検査(ABC分類)という検査項目が考案され、普及しています。この検査で胃がんのリスクが高い分類となった人は定期的に胃内視鏡検査を受け、また、ピロリ菌陽性の人はピロリ菌を薬物で退治する(除菌する)ことが勧められます。

 健診は1年間隔で受けるものが多いのですが、受診間隔が2年などに設定されているものもあります。健診は受診間隔に従って継続的に、できれば同一の健診施設で受診することをお勧めします。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 いわい・のぶお 鳥取西高校、群馬大学医学部卒。鳥取大学医学部公衆衛生学教室、中国労働衛生協会鳥取検診所、倉敷成人病健診センターなどを経て2016年より津山中央病院勤務。医学博士。人間ドック健診専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年10月16日 更新)

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