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(5)スポーツ整形外科とは 岡山旭東病院整形外科主任医長 中村恭啓

中村恭啓整形外科主任医長

 スポーツ整形外科は、スポーツ活動により起きてしまったけがや障害(主に痛み)に対応し、早く確実な復帰に向けて、より良い治療を選択してサポートします。また、けがや障害を起こしにくい体づくりのお手伝いをします。健康づくりを目標とした運動療法についても取り組んでいます。

 ●急に痛みが出た時や、けがをしてしまった時

 スポーツ現場でできる応急処置に「RICE」があります。R=安静、I=アイシング、C=(患部)圧迫、E=患部を心臓より高い位置に挙げる―を表す英語の頭文字をとっています。痛みを感じてから2日くらいは30度程度のぬるめのシャワーで汗を流すのみにして、熱い湯につかることは控えましょう。

 ●症状が長引く時

 スポーツ整形外科の受診をお勧めします。「レギュラーから外されるのでは」とか、「試合に間に合わないかもしれない」などの心配もあるかもしれませんが、症状を悪化させないためにも、正しい診断と治療方針を立てることが重要です。心配するほど重症でないことが分かることも多くあります。

 ●受診時

 問診で、痛みのきっかけ、部位や程度、どのような動きで困るかなどを聞いて、患部を中心に診察し、動きや腫れ、関節不安定性などをチェックします。これだけでも診断がつくことが多いですが、原因が分かりやすいよう、費用なども考えて検査を選択します。当院では、通常は後日の検査になることが多いMRIでも、受診当日の検査が可能(朝9時頃までに受け付けた場合)です。結果説明まで1日で終えることができます。

 ●治療

 手術療法と手術をしない保存療法があります。目標とする試合や復帰時期に間に合わせることができるのか、少々時間がかかっても完治を目指すのか、などを本人と家族や指導者と相談の上、治療法を決定します。手術がより確実な結果を出すけが・障害も多くあります。手術の場合、関節鏡(内視鏡)も使用し、できるだけ小さい皮膚切開で行うよう心がけています。手術内容によっても異なりますが、入院は2泊3日が最も多く、53%を占めます。平均在院日数は6・8日となっています。

 ●治療方針が決まったら

 受診日からできるリハビリを開始します。その時点でしてはいけないこと、逆にしっかりしておくべきことをはっきりさせます。当院にはスポーツリハビリ専門の理学療法士が5人おり、復帰までのお手伝いをしています。みんな競技レベルでスポーツ活動を行い、故障に泣いた経験もあります。それを生かしてメンタル面でも患者さんをサポートできるよう、取り組んでいます。

 ●けが・障害を繰り返さないために

 外来では、どの程度治っているか、関節の動きや筋力などが再び獲得されているか、などをチェックします。また、普段のコンディショニングや危険な肢位(しい)(着地の際のバランスなど)など、けがや障害を繰り返さないためにできることを伝えています。中学・高校で講義をすることもあります。

 ●終わりに

 競技スポーツのみならず、生涯スポーツとしても、年齢、体力や骨・関節の状態に合わせて運動処方をします。乗り物や交通機関が発達し、気付かないうちに運動不足に陥ってしまうことが多い昨今ですが、スポーツの魅力は色あせることなく、丈夫な体づくりの基本となるものです。皆さん、一緒に健康な体をつくっていきましょう。

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 岡山旭東病院(086―276―3231)

 なかむら・やすひろ 大阪星光学院高校、岡山大学医学部卒。川崎医大付属川崎病院で約20年にわたりスポーツ整形外科の研さんを積み、2012年より現職。川崎医療福祉大学非常勤講師。岡山市スポーツ・文化振興財団評議委員。日本整形外科学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本リウマチ財団登録医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年11月06日 更新)

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