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(1)総合診療医とは 岡山西大寺病院副院長 小橋雄一

小橋雄一副院長

 総合(診療)医はジェネラリストとも言われ、臓器の問題を高度な技術で診ていく臓器専門医ではなく、個人を全体的に診る専門医です。臓器専門医に対しては横断的総合医とでも呼べばよいでしょうか。総合診療の基本は、コミュニケーションを重視した患者中心のチーム医療と、科学的根拠に基づいた安全で質の高い医療の提供に凝縮できると言われています。

 総合診療医は医療ニーズに対応して、地域における総合診療の担い手=家庭医と、病院における総合診療の担い手=病院総合診療医に大別されます。医療技術が高度化し専門分化が進む(大)病院の中で、多くの健康問題を抱える患者さんへの対応が求められています。そうした患者さんを包括的に診て統合する専門医が、また、プライマリーケア機能や教育機能を持つ専門医が必要となっています。

 医療機関の役割分担も新時代の医療に欠かせないと考えられます。臓器別専門医の存在理由は修練を通じて身につけた高度技術で病巣、病変に立ち向かうところにあるとすれば、総合診療医の真骨頂は患者さんにとって身近な相談相手として、あるいは情報コーディネーター、患者さんの代弁者として機能するところにあると言われています。

 元来、総合診療では、患者さんの訴えのいかんにかかわらず、その患者さんが最善の治療を受けられるような医療を展開することを目標とします。総合診療医が診察をして診断をつけ、一般的な病気は総合診療医が診療を行い、専門性の高い病気は専門医を紹介します。感染症や糖尿病、高血圧症、脂質異常症などよくある病気に関しては、総合診療医は診慣れており、自分で対応します。

 重要なのは患者さんをトータルに診るということ。日常診療において患者さんを一面的な側面からだけではなく、多方面から診ることによって、総合的に判断することが大切です。

 一般病院では、原因がはっきりしない訴えや診断がつかない問題に関して、総合診療医が対応します。各科にわたる多方面の考察を行うことによって全体像を描きながら、必要な部分は専門医と相談し、患者さんをじっくり診ていくことで診断の糸口とします。

 例えば、熱の原因がはっきりしないなど、一つの専門科の知識だけでは対応が難しく、トータルに診ないと診断がつかない場合もしばしばあります。よくある健康問題、よく分からない症状に対して、患者さんをトータルに診て対応する専門医である総合診療医の役割は、今後ますます重要になってくると思われます。

 最後に当院総合診療科の方針、目標を記します。診断のついていない健康問題を抱える患者さんに対して、臓器の枠にとらわれない知識を生かし、幅広い医療を提供することを目指しています。

 私たちは、どの診療科を受診すればよいのか分からない患者さん▽専門の診療科への紹介状を持たない患者さん▽救急車で搬送された患者さん▽転倒や転落、切り傷など外傷のある患者さん▽健康診断で異常があったがどの科に行けばよいか分からない患者さん―を外来で診察します。診断の結果、専門診療科への紹介が好ましい場合には速やかに連携し、総合診療科で治療が可能であれば外来・入院で加療するなど、患者さんのニーズに対応しております。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 こばし・ゆういち 玉野高校、岡山大学医学部卒。同大医学部付属病院、香川県立中央病院、国立岡山病院、寺岡記念病院、姫路第一病院を経て2014年、岡山西大寺病院へ赴任。医学博士、日本外科学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年11月20日 更新)

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