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住民の健康管理「サポート薬局」 24時間相談や講座も普及に課題

患者に薬を手渡す健康サポート薬局の薬剤師。多くの大衆薬(カウンターの下や奥)を扱うことも認定の条件だ=玉野市宇野、ダテ薬局メルカ店

 住民の健康管理を薬剤師が支援する「健康サポート薬局」を名乗る薬局が岡山県内で誕生している。薬の調剤だけでなく、24時間体制で服薬や体調管理の相談に乗ったり、地域で健康講座を開いたりする役割を担う。超高齢社会を迎え、医療費の抑制や在宅医療の普及につなげるのを目的に、国が昨秋に制度化した。だが、認定は県内の全薬局の約2%にとどまっており、普及に課題を残している。

 「健康サポート薬局 あなたの健康管理をお手伝いします」。店舗入り口に張られた表示が目に入る。今年2月に健康サポート薬局に認定された岡山市東区瀬戸町光明谷、サンヨー薬局赤磐店。店内には健康に関する十数種類のチラシやパンフレットがずらりと並ぶ。

 管理薬剤師の中嶋和生さんは「患者さんがどれを手に取ったかを確認している。それを糸口に会話のきっかけをつかんで、まだまだ知られていない健康サポート薬局の役割まで伝えたい」と話す。

■7市町で認定

 健康サポート薬局は、国が昨年10月に制度化した。今年10月末現在、岡山、倉敷、玉野、赤磐、真庭、和気、矢掛の7市町の19薬局が認定されている。

 所定の研修(30時間)を受けた勤務歴5年以上の薬剤師が常駐している▽患者からの相談に24時間応じている▽カウンターに仕切りなどをしてプライバシーに配慮している▽医療機関や介護施設と連携している▽大衆薬や介護用品を扱っている―といった条件を満たせば、最寄りの自治体に届け出ることができる。

 玉野市宇野、ダテ薬局メルカ店では、閉店後に店にかかってくる電話は管理薬剤師の池田澄子さんらの携帯電話に転送される。「具合が悪い。どんな薬を飲めばいいですか」といった相談が多く、池田さんは「仕事の幅が広がり、励みになっている」と言う。

■目標の1割

 国は、最期まで住み慣れた地域で暮らし続けられるための医療と介護を提供する地域包括ケアシステムの中に健康サポート薬局を組み込んだ。団塊の世代が全員75歳以上になる2025年までに中学校区ごとに最低1カ所置きたい方針。県内では全約800薬局の約2割に当たる約150薬局が届け出なければならない計算だ。

 しかし、現状は目標の1割余りにとどまっている。複数の薬剤師がいなければ24時間の対応が困難なことや、増収につながる調剤報酬の加算がないことなどが影響しているとみられ、今後の動向は不透明だ。

 それでも認定を受けた理由について、県南のある薬局は「調剤を手掛ける大手ドラッグストアが増えており、地域に密着したサービスを提供して存在感を高めなければ生き残れない」と打ち明ける。

 県薬剤師会の出石啓治副会長は「医療と介護の連携を進める上で、各薬局が地域の中でどういう役割を果たしていくべきかを考え、できるだけ多くの薬局が認定を受けてほしい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年12月01日 更新)

タグ: 健康

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