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(7)総合内科と感染症内科 津山中央病院総合内科・感染症内科医長 藤田浩二

津山中央病院の感染管理チームのメンバー

顕微鏡による病原微生物の観察

迅速な検査で原因微生物を突き止める細菌検査室

細菌培養による検査を行うスタッフ

藤田浩二総合内科・感染症内科医長

 当院は今年4月、総合内科・感染症内科を立ち上げました。少子高齢化が進む日本の現状で、多くの患者さんは複数の健康問題を同時に抱える(マルチプロブレム)ことになり、非常に複雑な問題が絡み合います。初診外来や救急などでは、これらのマルチプロブレムに対応できる若手医師の育成も必要になります。マルチプロブレムを抱える患者さんの診断や治療に携わりながら、マルチプロブレムに対応できる若手医師を教育する役割も担う診療科が必要なのです。

 また近年、世界的に抗菌薬の乱用とそれによって生じる耐性菌が大きな問題となっています。現状が続くと、2050年には耐性菌によって亡くなる患者さんが世界で年間1千万人を超え、がんで亡くなる患者数を上回ると言われています。従って、正しい熱の診断と正しい抗菌薬の使用方法を、患者さんにも、他の医療従事者にも広げていく必要があります。この教育的役割を担う診療科が必要な時代なのです。つまり、総合内科と感染症内科の存在が重要なのです。

 総合内科では、臓器による区分にこだわらず、複数の健康問題を含めて「その人を丸ごと診る」ことを目指す内科でありたいと考えています。高血圧、高脂血症、糖尿病などのよくある疾患の外来管理から、急変して緊急入院が必要になった場合まで担当します。

 さらに、当科が担うべき役割の一つが、不明熱の診断です。熱と言っても、原因は感染症、悪性腫瘍、膠原(こうげん)病、薬剤熱など多岐にわたります。熱の出どころが分からず困っているケースを、総合内科的切り口で整理していきます。

 感染症内科ではあらゆる感染症を扱うのですが、そもそも感染症とは何でしょうか? 簡単に言えば、この世に存在する微生物、すなわち細菌や真菌(カビ)、寄生虫、ウイルスが引き起こす疾患のことです。風邪のような軽いものから命の危機に至るような重症の感染症まで、全ての疾患の予防や治療に対応するのが感染症内科の役割です。

 細菌に効く抗菌薬、カビに効く抗真菌薬、寄生虫に効く駆虫薬、ウイルスに効く抗ウイルス薬を使いこなします。対応する疾患は、髄膜炎、肺炎、胆管炎、虫垂炎、椎体炎、感染性心内膜炎、蜂窩織(ほうかしき)炎、壊死性筋膜炎、術後創部感染、結核、HIV、性感染症…と、挙げれば切りがありません。また、定期ワクチン接種の相談や、海外渡航の準備(渡航用ワクチンなど)、帰国後の体調不良にも対応します。

 感染症内科のほか、専門のナース、細菌検査技師、薬剤師を含む感染管理チーム(ICT)で力を合わせて日々の診療を行っています。当院は院内に細菌検査室を備えており、原因微生物の迅速な検査が行えるのも大きな強みです。

 もし、複数の健康問題を同時に抱えて悩んでおられたり、あるいは何らかの感染症や原因の分からない熱に困っておられれば、ぜひ当科にお問い合わせください。私たちが全力で対応させていただきます。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 ふじた こうじ 岡山大安寺高校、京都薬科大学薬学部卒、岡山大学医学部卒。津山中央病院、亀田総合病院を経て、2017年より再び津山中央病院勤務。厚生労働省指導医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会認定総合内科専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年12月04日 更新)

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