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東京都済生会渋谷診療所 松岡所長が岡山で講演 糖尿病治療のこつ 食事と運動、自己管理大切

糖尿病自己管理のこつ(表)

講演の後、会場の質問に答える松岡所長=岡山コンベンションセンター

 食べ過ぎや運動不足が誘因となる糖尿病は代表的な生活習慣病だ。わが国の糖尿病治療をリードしてきた松岡健平・東京都済生会渋谷診療所長は岡山市での講演で、「治療の基本は食事療法と運動療法で、昔から変わらない」と、患者による自己管理の大切さを強調。最新の研究成果を踏まえ、そのこつ=別表=をアドバイスした。

 岡山済生会総合病院(岡山市伊福町)が開いた市民公開講座で講演した。

 膵臓(すいぞう)で作られるホルモン・インスリンの分泌、作用が不足して血液中のブドウ糖値(血糖値)が異常に高くなる糖尿病。厚生労働省の二〇〇二年調査によると、全国の患者数は七百四十万人とされ、過去五年で五十万人増加。さらに、いわゆる患者予備軍(境界型)は八百八十万人と、二百万人も増えた。

 糖尿病は二つのタイプがある。1型は膵臓の細胞が破壊されインスリンが作られず、子どもに多い。2型はインスリンが作られても量が不足したり、うまく働かず、日本人の患者の95%を占めるとされる。ただ、「同じ2型でも太っているか、やせているかや合併症の有無などにより(病状は)一人一人違う」と松岡所長。「他の患者に合った治療法が自分にも通用するとは限らない」と、病気を理解し、自分に合った治療方法を医師と相談するよう訴えた。

 特に注意を求めた糖毒性は、いったん高血糖が起こると、インスリンが効きにくくなったり、膵臓のインスリン生産能力が低下し、さらなる高血糖を呼ぶ悪循環のこと。糖毒性を早急に取り除く必要があるときは、インスリンを注射するインスリン療法を行うこともあるという。

 血糖値が慢性的に高いため起きる糖尿病の三大合併症が網膜症と腎症、神経障害。進行すると、失明したり、人工透析が必要になるなど生活の質への影響は重大だ。

 また、動脈硬化が進みやすく、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の発症率も高くなるのが近年注目されている。厚労省の二〇〇二年調査では、患者のうち心臓病の合併症があるのは15・8%と、五年前の前回調査に比べ3・4ポイント上昇。脳卒中の合併症も7・9%と3・5ポイント上がった。松岡所長は「動脈硬化は糖尿病予備軍の時に既に始まっている。予防のため、血糖値だけでなく血圧、脂質、喫煙、肥満などにも気を配ってほしい」とアドバイスした。

 最後に、患者と医師、看護師、栄養士の間のデータ共有、意思疎通の大切さを強調。「医療チームと共同作業で治療に当たろう」と呼び掛けた。


 まつおか・けんぺい 糖尿病の臨床一筋に歩み、東京都済生会中央病院副院長、同会糖尿病臨床研究センター所長など歴任。1998年日本糖尿病眼学会長、翌年は日本糖尿病学会長を務めた。2004年から現職。日本糖尿病療養指導士認定機構理事長など兼務。慶応大卒。70歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年07月30日 更新)

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