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石川紘岡山県医師会長に聞く 発足70周年、健康寿命延伸に力

70周年を迎えた岡山県医師会で、県民に身近な公開講座の開催などに力を入れたいと語る石川会長

岡山県医師会の活動拠点となり、県民公開講座やシンポジウムなどの会場としても利用されている県医師会館

 戦後の新生医師会として1947年11月に発足した岡山県医師会が70周年を迎えた。現在は開業医、勤務医を合わせ3128人(今月1日現在)の会員を擁し、県民の健康福祉を守る中核組織として活動している。超高齢社会に突入し、医師会に期待される役割も変わりつつある中、力を入れている取り組みや、16年3月に開業した新県医師会館を拠点とする活動について、石川紘県医師会会長(78)に尋ねた。

 ―70年前に発足した新生岡山県医師会は、全国でも医師会民主化の先駆けになったと伺っています。

 榊原亨初代会長は当時、「医師会は自分自身の持っている全知全能を、人類のために惜しみなく与える聖なる霊場である。それが医師の天職なのだ」という高邁(こうまい)な理念を述べておられます。われわれはその言葉を常に肝に銘じ、県民の健康福祉を守ることを第一の使命として医師会活動を実施しています。

 ―石川会長ご自身は、どのような活動に一番力を入れておられますか。

 健康寿命を延伸したいですね。介護が必要になったり、寝たきりになったりする期間をできるだけ短くするには、運動と食事に気を配る必要があります。私は作家宇野千代さんの「人生はいつだって今が最高」という言葉が大好きなんですが、明日の「今」を迎えるために努力する。健康は自分で管理していかなければなりません。

 ―新県医師会館に移り、健康について、直接県民に呼び掛ける機会が増えたのではないでしょうか。

 新たな国民病とされる慢性腎臓病(CKD)の予防や治療を含め、糖尿病対策に国の存亡がかかっていると言っても過言ではありません。新会館が県民公開講座の会場になり、より県医師会を身近に感じていただいていると思います。県医師会のスポーツ医部会は、大事な運動療法を進めていくための講座を開いています。受動喫煙の防止や、乳がんなどのがん検診受診についても、県民に対する啓発活動に取り組んでいます。

 ―団塊の世代が後期高齢者になる2025年を控え、地域包括ケアが課題になっていますね。

 それぞれの地域において看護師やケアマネジャー、介護サービス従事者ら医療・介護の最前線に立つ多職種の連携が大切であり、その中心に立つのが私たち医師です。県医師会は地域包括ケア部会をつくっており、熱心に研修会やグループワークに取り組んでいます。また、専任の地域包括ケアコーディネーターを配置し、地域医師会と連絡を取るなど活動を支援しています。

 ―最近、人生の最終段階の迎え方をあらかじめ決めておくアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が注目されています。

 患者の意思を尊重した人生の最終段階の医療が重要になってきました。一人一人違う患者の意思を尊重し、それを実現するのは非常に難しいことです。患者自身が意思決定をするためには、適切な情報を得て、それを理解しなければなりません。患者にとって最善の医療やケアも、状況によって刻々と変化します。

 県医師会では、県内の現状と課題について、研修会参加者の意識調査を実施しています。今後、医療従事者がACPを実践できるよう取り組んでいきます。

 ―新会館は災害時の医療救護活動でも拠点になるのでしょうか。

 交通機関の中心にあり、人が集まりやすいので、岡山で災害が起きた場合の避難場所にもなりますし、医療救護班のために食料などを備蓄しています。2016年の熊本地震救護活動の際も、ここに集合して発進しました。中四国各県の医師会で一つのブロックをつくっており、災害時の救護活動のための協定を締結しています。

 ―素案がまとまった第8次岡山県保健医療計画でも、石川会長が策定協議会の会長を務めておられます。

 岡山県には五つの二次保健医療圏があり、各圏域ごとの調整会議で盛んに協議しました。圏域の中でも格差があり、医師不足や後継者不足、市町村の財政負担も考えないといけません。17年度に地域枠の医師が2人誕生しましたが、各圏域のバランスを上手に取り、いっそう効率的な医療・介護サービスの提供を図る必要があるでしょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年01月15日 更新)

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