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(2)チームケア 瀬戸ライフサポートセンター介護老人保健施設瀬戸いこい苑支援相談員 藤井典子

入所1カ月後の男性が取り組んでいるリハビリの様子。介助を受けながら歩行器を使って歩けるようになった(画像の一部を加工しています)

藤井典子支援相談員 

 医学の進歩などにより、日本は長寿大国となりました。しかし、加齢による心身の機能の衰えは誰しも避けて通ることはできず、多くの高齢者が病気や障がい、生活環境、家族背景、経済事情などの悩みを抱えて暮らしています。高齢者本人や家族だけでは解決できない課題については医療・介護・福祉などの専門職に必要な支援を求めることも有益です。

 瀬戸ライフサポートセンター3階にある介護老人保健施設瀬戸いこい苑では、日常生活に介護が必要となった高齢者が再び住み慣れた地域で暮らせるよう、医師、看護師、介護福祉士、リハビリ職、管理栄養士、薬剤師、介護支援専門員、支援相談員、事務職員ら多数の専門職が協力し合い、チームとして高齢者や家族をサポートしています。

また歩けるようになりたい

 突然歩けなくなり、当センターと連携する笠岡市外の病院に救急搬送された80歳代の男性は、両下肢の麻痺(まひ)などの症状があり、検査の結果、脊髄(せきずい)の血管が詰まって運動麻痺や痛みが出る脊髄梗塞(こうそく)と診断されました。ほぼ寝たきり状態での療養を強いられ、主治医からも「残念ながら麻痺が回復する見込みはない」と説明を受けた男性と家族は大きなショックを受けました。

 病院での治療を終えると、男性は引き続き生活面のリハビリを行うため、当施設に入所されました。私たち各専門職が状態や課題などを把握し、作成したケアプラン(介護サービス計画)をもとに、全身状態の管理から始め、自立を促しながら、毎回の食事を食堂で食べていただき、日常生活の介助、リハビリなどに取り組みました。

 入所から1カ月経過する頃には、一部介助を受けてベッドから起き上がったり、立ったりできるようになり、歩行器を使って歩けるまでに回復されました。男性は「足の感覚が戻ってきているのを実感している。また歩けるようになりたい」と目を輝かせ、家族も「歩けるようになるとは思っていなかった。だんだん動きもシャープになってきている」と喜ばれました。

 現在は、半ば諦めかけていた自宅での生活についても、少し希望の光が見え始めています。男性の支援はまだ始まったばかりですが、このように短期間で身体機能や意欲の改善がみられるのも、介護老人保健施設のチームケアならではだと思います。

最後まで責任を持って

 厚労省の「高齢社会に関する意識調査」で分かるように、多くの方は介護が必要になっても、住み慣れた自宅での生活を希望しています。当施設も在宅復帰支援に力を入れていますが、いくら心身の状態が回復しても、それぞれの置かれた環境などにより、在宅復帰がかなわない場合も多くあるのが実情です。

 その場合でも、本人・家族の状況に適した生活場所を一緒に相談し、最後まで責任を持って、他施設・他機関へ引き継いでいます。退所先のグラフに示したように、希望される方には当施設で看取(みと)りも行わせていただいています。

 いつまでも地域・社会の一員として「その人らしく」生活できるよう、私たちはこれからも多職種のチームが一丸となって支援していきます。

     ◇

 瀬戸ライフサポートセンター=特別養護老人ホーム瀬戸内荘(0865―67―3100)、介護老人保健施設瀬戸いこい苑(0865―67―0770)

 ふじい・のりこ 笠岡高校、川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科卒。1999年より瀬戸いこい苑勤務。社会福祉士。介護支援専門員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年02月06日 更新)

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