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(4)リウマチってどんなもの? 岡山西大寺病院整形外科医師 北村亜以

赤の丸印がPIP関節、緑はMP関節、青はDIP関節

北村亜以整形外科医師 

 「リウマチ」という病名は皆さんによく知られています。手がこわばったりして、「リウマチではないか」と心配するという話もよく聞きます。

 正確な病名は「関節リウマチ」で、罹患(りかん)率は約0・5~1%。200人に1人くらいがかかるといわれています。また、女性に多く見られる病気ですが、患者の5人に1人は男性で、意外に男性にも少なくありません。

 初発症状として多いのは、手や指の痛みと腫れです。手の指の中でもPIP関節(いわゆる第2関節)とMP関節(握りこぶしをつくった時に手の甲の盛り上がる部分)が多く、DIP関節(指先、いわゆる第1関節)にはほとんど見られません(写真参照)。手の病気と思われがちですが、足や足指にも比較的多く症状が出てきます。まれに膝や肩、肘から発症する方もいます。

 関節リウマチは関節の炎症が主体です。関節の中の滑膜という絨毛(じゅうもう)状の組織が異常に増殖し、さまざまな炎症因子を産生して炎症を引き起こします。炎症が続くと、軟骨や骨、靭帯(じんたい)、その他の軟部組織を障害し、関節破壊が進行します(イラスト参照)。進行すると、肺や血管などにも障害を起こすため、早期発見、早期治療が大事です。手足の関節の腫れと痛みが1カ月以上続くようなら、受診をお勧めします。

 来院されたら、最初は手足のさまざまな部分の診察を行いますので、ぴっちりした服装は避けた方が無難です。全身の関節について触診を行い、腫れや痛みをチェックします。関節の腫れにもいろいろあり、水がたまっているのか、滑膜が腫れているのか、関節外が腫れていないかなども診察します。

 診察と併せて画像検査と血液検査を行います。画像検査はまずレントゲン検査を受けていただきます。関節リウマチと似たような症状を起こす病気がありますが、レントゲンで見れば関節の変形具合が違います。診断が難しい場合は、超音波やMRI検査を行うこともあります。血液検査は関節リウマチ患者で多く発現するマーカーなどを検査します。

 関節リウマチを心配される方の中で最も多いのが、ヘバーデン結節という、リウマチとは異なるDIP関節の変形です。また、変形性関節症もあらゆる関節に起こり得るため、鑑別が必要です。他にも膠原(こうげん)病による関節炎、靭帯や腱(けん)など関節外が原因である場合もあります。

 関節リウマチの発症の様式は人それぞれで、典型的な症状の人もいれば、長く経過を見て何とか診断できることもあります。経過中に他の病気と診断されたり、合併したりすることもあります。リウマチ専門医はさまざまな疾患を常に念頭に置いて診察、治療しています。

 関節リウマチと診断されたら、全身の検査をして早期からしっかり治療します。以前は治療法が少なく、どうしても次第に症状が悪化していましたが、近年効果の高い薬が開発、発売されています。徐々に関節の変形が進行していく病気ですが、早く強力に治療するほど、病気の進行を停止または抑制し、関節変形を食い止められる可能性が高く、他の合併症も減らすことができます。

 また、手術も進歩してきました。変形した関節があっても自分の関節を温存できる関節形成術から、重度の変形に対する人工関節置換術まであります。現在も次々に新しい治療薬や手術手技が開発、報告されており、治療法は進歩し続けています。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 きたむら・あい 土佐高校(高知市)、岡山大学医学部、同大学院医歯学総合研究科卒。岡山赤十字病院、竜操整形外科病院などを経て2015年11月から岡山西大寺病院整形外科勤務。日本整形外科学会整形外科専門医、リウマチ医、運動器リハビリテーション医。日本リウマチ学会リウマチ専門医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年02月19日 更新)

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