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企業や地域の健診推進 淳風会が初事業報告会

健康診断やがん検診の大切さを呼びかけた淳風会初の保健事業報告会

胃がん検診での内視鏡検査の有効性を語った井上和彦・健康管理センター長

 企業や自治体が行う定期健康診断やがん検診、人間ドックなどを請け負う一般財団法人淳風会(岡山市北区)は2月15日、初の保健事業報告会を岡山市で開いた。検査や診断を担当する医師たちが最新の検査法や健診・検診の実績を説明し、従業員や住民の健康管理の大切さを訴えた。

 企業内で働く産業保健師、自治体の健診担当職員ら約600人が出席した。淳風会は今年を「第2の創業」と位置づけており、医療診療セクターの清水信義セクター長は「高齢化と人口減少が進む中、健康な社会を維持することがとても大切な時代になった。予防医学の立場から、健診と医療で健康な社会づくりに貢献する業務を、気分を新たに推進していきたい」と誓った。

 春間賢・副セクター長が岡山県内外の企業や事業所などから年間約23万人の受診者がある現状を説明した。検査データを直接タブレットに入力し、ネットワーク上のクラウドに保存する最新システム「スマートワン」も紹介した。健診の受診者は紙の受診票を持ち回る必要がなく、検査漏れを防ぎ、時間短縮を図っている。

 淳風会健康管理センター保健指導部長の佐田伸夫氏は「働く世代を支える 淳風会特定保健指導の今」、北里大学医学部の堤明純教授(公衆衛生学)は「ストレスチェックに関する科学的根拠」と題してそれぞれ講演し、健診結果を受けて行う保健指導の役割や、職場で高ストレス状態にある人を把握する重要性を指摘していた。

 淳風会は1956年、結核病棟の旭ヶ丘原病院と外来診療所を開設し、64年から健診事業を手がけている。現在は岡山、倉敷市に健康管理センターを置き、今年1月に改称したロングライフホスピタル(岡山市北区万成東町)で外来・入院治療を行っている。

40歳から胃がん検診を 井上和彦・健康管理センター長講演

 報告会では、長年内視鏡による胃がん検診に取り組んできた健康管理センターの井上和彦センター長(元川崎医科大学准教授)も講演し、「40歳以上の方は毎年、胃がん検診を受けてほしい」と呼びかけた。

 井上氏によると、これまでの研究で、胃がんを発病する人の99%はヘリコバクターピロリ菌の感染者であることが分かっている。4~5歳の幼児期にピロリ菌に感染すると、胃の粘膜が炎症を起こして萎縮が進み、若年時から胃の老化現象がみられ、発がんリスクが高まる。

 厚生労働省は2016年に通知した自治体向けのがん検診ガイドラインで、胃がんとピロリ菌感染の関係について理解する教育を重視した。従来エックス線検査だけだった胃がん検診には、ピロリ菌を調べられる内視鏡検査を加え、いずれかを選択できるようにした。ただし、従来40歳以上だった対象者は50歳以上(エックス線は40歳以上も可)に引き上げられた。

 30代、40代の検診で多くの胃がんを見つけてきた井上氏は「内視鏡で見つけた胃がんの半数以上は内視鏡で治療できている。症状が出てからでは、内視鏡で治療できる人は少なくなる」と指摘した。

 ガイドラインが示す対象年齢は、検査によってがん死亡率が低下する根拠があるかどうかで判断されているといい、「死亡率だけでなく、早期発見・治療すれば、普通に生活できるということも考慮すべきではないか」と訴えた。

 検診回数も、ガイドラインでは原則2年に1回でよいとされたが、井上氏は「一人一人の健康を守るため、毎年受診することが重要。企業健診では40代の胃がん検診を外さないでいただきたい」と話していた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年03月05日 更新)

タグ: 健康

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