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(4)ストーマについて チクバ外科・胃腸科・肛門科病院看護部病棟副主任 福島怜子

福島怜子看護部病棟副主任

 潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんは、病状が重症化した場合などに外科的手術の適応となることがあります。手術に伴い、状態によっては人工肛門(ストーマ)の造設が必要となります。今回はIBD患者さんに関わる消化管ストーマについてお話ししたいと思います。

 消化管ストーマとは、肛門の代わりに腹部の一部に腸でつくった排出口のことで、ここから便が出ます。つまり排泄(はいせつ)経路が変更されることになります。腸をつなぎ合わせる部分である吻合(ふんごう)部の縫合不全を避ける目的や、重度の直腸肛門病変、また大腸から肛門まで広範囲に切除する手術などで、ストーマをつくることが必要となります。

 ストーマにはいくつかの種類があります(図1参照)。IBD患者さんで最も多いのは回腸ストーマです。ガスと水様から半液体状の排泄物が出ますが、普通の便より臭いは少ないです。1日に出る排泄物の量が多いので、脱水予防のためにしっかりと水分を摂取する必要があります。

 結腸ストーマは大腸でつくられたストーマです。排泄物は軟便から固形で、臭気があります。どの種類のストーマでも、元の肛門にあった括約筋の働きがなくなるため、排泄のタイミングを調整することはできず、自然に出てくる状態になります。そのため、専用の袋をおなかに貼り、便を受け止める必要があります(図2参照)。

 一方、ストーマを造設すれば、日常生活に大きな制限はなくなります。食事や入浴はもちろん、学校に行ったり、仕事をしたり、旅行や妊娠・出産も可能です。家族や友人、同僚などが「理解者」になってくれれば、日常生活はより過ごしやすくなります。

 当院では、IBDを専門とする内科医と外科医で検討した上で、外科手術を決定します。術前からIBDチームが介入し、身体的・社会的・精神的側面から、患者さんの術前術後の問題点を分析し、治療プランを立てます。

 ストーマ造設の可能性がある場合は、診断時に皮膚・排泄ケア認定看護師に連絡があり、可能な限り手術前から患者さんと面談し、手術やストーマについての情報をお教えするようにしています。術後は全身状態の回復をみながら、ストーマのセルフケアを習得していただきます。

 IBDの術後管理は合併症の頻度が高く、ストーマの合併症も起きやすいです。ストーマの周囲に感染が起きたり、それに伴って創傷の治癒が遅れたりすることが多くありますが、合併症の発症を最小限に抑え、発症した場合は早期治癒を促すため、術後も早期からIBDチームを中心とした多職種が関わります。

 また、手術直後だけではなく、数カ月から数年後に合併症が起きることもあります。退院後も安心した生活が送れるように、ストーマ外来で一人一人のライフスタイルに合わせた長期的なサポートを行っています。

 ストーマを造設した患者さんから「生活しやすくなった」「旅行やスポーツができるようになった」という声を聞くことがあります。その言葉からも、ストーマは「最悪の選択」ではなく、生活の質を上げるための「治療の一つ」だと思っています。

 今後も生活に喜びを得られる患者さんが一人でも増えるよう、多職種が連携し、患者さんのサポートを続けていきたいと思っています。

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 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(086―485―1755)

 ふくしま・りょうこ 児島看護高等専修学校、倉敷看護専門学校、山陽学園大学認定看護師教育課程(皮膚・排泄ケア)卒。チクバ外科・胃腸科・肛門科病院で病棟副主任を務め、IBDチーム、褥瘡対策チームに所属。皮膚・排泄ケア認定看護師として患者指導、スタッフ教育、ストーマ外来(毎週水曜日)に携わる。

 IBDチーム IBD専門内科医、外科医、看護師、薬剤師、栄養士、医事課職員、医療ソーシャルワーカーでつくるIBD患者さんのサポートチーム

 皮膚・排泄ケア認定看護師 創傷や褥瘡(じょくそう)、ストーマ、失禁管理の看護の分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる看護師
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年03月05日 更新)

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