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災害時ストーマ供給へマニュアル 県対策の会作成中、連絡体制整備

対応マニュアルの原案を基に文章の表現などを協議した最終会合=1月

 大規模地震などの際、ストーマ(人工肛門、人工ぼうこう)を着けた人が困難な状況に陥らないようにと、「岡山県ストーマ保有者災害対策の会」(会長・藤原俊義岡山大病院副病院長、約70人)は、装具を円滑に供給するためのマニュアル作成に取り組んでいる。東日本大震災で深刻な装具不足を招いた教訓を踏まえ、医師や看護師ら会員の役割を決め、連絡体制なども整備。5月をめどに完成させる計画だ。

 発案者は、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)でストーマのケアに携わる看護師青井美由紀さん(52)。東日本大震災の発生直後、県外の看護師仲間から「被災地に装具を送るために協力してほしい」と頼まれ、災害時に装具が不足することの深刻さを痛感したという。

 近い将来の発生が懸念される南海トラフ地震に備えて対応マニュアルを作ろうと、医師や看護師、装具メーカーに呼び掛けて2013年に同会を設立。会合を年3、4回のペースで重ねて作業を進めてきた。

 16年9月にまとめた原案では、会員の役割▽支援の対象者と期間▽災害時の連絡体制―といった8項目を設定。会員は、勤務する病院などでの装具の保管状況を把握し、使用する際に必要なスキンケアなど関連用品も準備する。併せて、2週間分の装具を入れた非常持ち出し袋などの用意を患者に指導することも役割に盛り込んだ。

 災害に備えて会員が装具を確保するための連絡体制も整備。患者に装具を提供したり、ケアのアドバイスを行ったりする支援病院(県内10カ所)の住所や電話番号も記載している。

 岡山大病院で1月上旬、マニュアル作成に向けた最終会合が開かれ、中心メンバー15人が原案を踏まえて協議。文章の表現や言い回しについて意見を交わした。現在は、メールで募った意見も踏まえて修正作業を重ねている。

 ストーマを装着した患者は県内に約4千人いるとされ、青井さんは「完成したマニュアルは会員に配布し、内容を周知徹底していく。いざというときに患者が困らないよう、万全の態勢を取りたい」と話している。

 ストーマの装具 病気などでストーマを着けた人が日常生活を送るために必要な物品で、排便の消化管用と排尿の尿路用がある。ストーマ周辺の皮膚に着ける「面板」と、その面板とつながる袋でストーマからの排せつ物を受け止める「パウチ」で構成する。装具とは別に、面板と皮膚の密着度を高めるテープや、ストーマの周りの汚れを落とす皮膚清浄剤といった関連用品も用意されている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年03月19日 更新)

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