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(1)旭川荘の医療体制 社会福祉法人旭川荘理事長 末光茂

創立当時の旭川療育園の子どもたち

旭川児童院では入園している重症心身障害児が職員と一緒に「スイカ割り」などの行事を楽しんでいる

末光茂理事長

 障害のある人たちにとって、生活支援や就労支援などの福祉サービスは不可欠です。同時に、障害の原因の治療をはじめ、人工呼吸器でのケアなど、特別な医療サービスを必要とするケースが少なくありません。主に岡山県内をエリアとするこうした医療ニーズに対し、旭川荘は昭和32年(1957年)の設立当初から大きな役割を担ってきました。

 その中核となる「旭川荘療育・医療センター」は、児童福祉法や障害者総合支援法に基づく福祉施設であると同時に、医療法に基づく病院でもあるという、独自の類型の施設です。

 主に身体障害のある子ども(肢体不自由児)を対象とした「旭川療育園」と、重度の身体障害と重度の知的障害が重複する人(重症心身障害児者)を対象とした「旭川児童院」の2施設で構成されています。肢体不自由児の入所施設は岡山県内唯一であり、重症心身障害児者の入所施設は県内に二つしかありません。(もう一つは早島町にある国立病院機構・南岡山医療センターです)

 「旭川療育園」では、脳性麻痺(まひ)や小児整形外科疾患などの入園児に対する治療、リハビリテーションなどを行っています。また、障害児の早期発見・早期治療を目指して、在宅児に対する通園事業、外来診療、親子入園も実施してきました。

 「旭川児童院」では、入園している重症心身障害児者に対する治療・看護やリハビリのほか、小児科、児童精神科、歯科などの専門外来を設けています。自宅への訪問療育や、短期入所、通園事業にも取り組んできました。

 近年、医療の発達や、障害があっても地域で普通に暮らすノーマライゼーションの進展に伴い、在宅生活を希望する障害児者が増加しています。旭川荘では、在宅生活を送る障害児者がいつでも安心して受診できるように、両施設の外来・在宅部門を統合し、ワンストップで利用できる体制を整えました。

 その中で今、一番問題なのが「医療的ケア児」と呼ばれる児童です。この子たちの多くは医療機関の新生児集中治療室(NICU)などで命を助けられたものの、障害が残り、人工呼吸器や経管栄養などの手厚い医療的ケアが必要です。

 従来から法に基づくサービスの対象とされている重症心身障害児と違い、歩行が可能で、知的障害がないか、あってもごく軽い子たちです。現在全国で推計1万7千人が法の谷間に置かれています。岡山県下では約300人と推定されます。法整備とともに、旭川荘などに対し、現場ならではの先導的なサービスを実践する役割が期待されています。特に保育所や小学校などでの受け入れが急務です。

 さらに、一般の病院では人間ドックを受けにくい障害者のため、旭川荘として専用の人間ドックの実施を検討するなど、在宅生活を総合的に支える仕組みを構築したいと考えています。そのためには、地域の医療関係者を中心に、福祉、教育機関などとの連携も欠かせません。ぜひともご理解とご協力をお願いします。

 次回から4回にわたり、旭川荘が担っている障害児者の整形外科、小児科、歯科、在宅ケア体制の各分野について、詳しく説明します。

     ◇

 社会福祉法人旭川荘(086―275―0131)

 すえみつ・しげる 1942年松山市生まれ。67年岡山大学医学部を卒業し、旭川荘旭川児童院に児童精神科医として勤務。88年旭川児童院院長。91年川崎医療福祉大学教授、2007年から旭川荘理事長。中国・上海市第二社会福利院名誉院長なども務める。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年03月19日 更新)

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