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敗血症は特定タンパク質増で改善 岡山大大学院の森松教授ら確認

森松博史教授

 臓器障害などを引き起こす「敗血症」の患者には、特定のタンパク質が健康な人よりも大幅に少なくなっていることが、岡山大大学院の森松博史教授(麻酔・蘇生学)らの臨床研究で分かった。このタンパク質が増えれば症状が改善されることが動物実験では判明しており、敗血症に効果的な診断・治療薬の開発につながる可能性があるという。

 このタンパク質は肝臓から血中に分泌される血漿(けっしょう)タンパク質の一種「HRG」。細菌、ウイルスといった感染症により全身の炎症や多臓器不全が起きる敗血症と関係している可能性があり、同大大学院の西堀正洋教授(薬理学)が、HRGをマウスに投与して血栓の発生を抑えるなどの効果を確認している。

 これを踏まえ、森松教授は2012年11月から2年間、体内に炎症のある同大病院集中治療室(ICU)の患者70人を対象に血液中の数値を調べた。その結果、健康な人に比べ、敗血症ではない患者(50人)はHRGの値が2分の1ほどに、敗血症患者(20人)では7分の1程度に低下していた。

 臨床研究では、ICUに運び込まれた時にHRG値が低かった患者は28日以内に亡くなる確率が高いことも確認した。森松教授は「敗血症の診断や治療だけでなく、患者の容体の見通しを知るための指標にもなり得る」としている。

 森松教授によると、敗血症は世界で年間1900万人がかかり、死亡率は20~30%とされるが、直接の効果がある治療法は確立されていない。診断薬は存在するが、重症度の判定が難しいケースがあるといい、今後、企業と連携してHRGの臨床応用に向けた検討を進める。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年04月23日 更新)

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