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コレステロール取りすぎ 歯周病の原因に 岡山大グループ 因果関係 初めて実証

友藤孝明助手

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の友藤孝明助手(口腔(くう)保健学)らの研究グループは、コレステロールの取りすぎが歯周病の原因になることを、動物実験で明らかにした。口腔内の細胞増殖がコントロールできなくなり、歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)が広がると考えられ、栄養指導など新たな予防法確立につながる成果として注目される。

 コレステロール値が高い人に歯周病を発症しているケースが多いことは分かっていたが、因果関係を科学的に実証したのは初めて。米の国際歯科研究学会誌の最新号で発表する。

 友藤助手らは健康なラット三十二匹を二グループに分け、標準食とコレステロール食をそれぞれ四週間食べさせた。さらに四週間餌を与えた上、各グループを、歯茎に水だけを塗った場合と歯周病を起こさせる毒素を塗った場合に分け、歯周病の進行具合を比較した。

 その結果、「コレステロール食と水」を与えたグループは歯を支える歯槽骨が溶け、歯周病の進行を裏付ける歯と歯茎のすき間が「標準食と水」のグループより約二十倍拡大。コレステロール食に毒素を加えた場合はさらに進行し、すき間が五十倍になった。

 「標準食と毒素」のラットはすき間は拡大したものの、歯槽骨はコレステロール食を摂取したラットほど溶けなかった。

 コレステロールを大量摂取した場合、口腔内の細胞機能が変化。歯茎の上皮細胞が歯根の方へ増殖し続け、歯周ポケットが拡大、細菌が入り込んで症状が悪化するとみられる。

 友藤助手は「毒素を塗らなくてもコレステロール食だけで歯周病を発症し、毒素を塗ればさらに症状が悪化することが分かった」とし、「喫煙、糖尿病に次ぐ第三の危険因子として、ヒトに対する影響を確認したり、栄養指導の改善に取り組みたい」と話している。


予防に貢献

 宮崎秀夫新潟大教授(予防歯科学)の話 歯周病を発症する新たな危険因子を明らかにした非常に意義のある研究成果だ。治療だけでなく、予防法確立にも大きく貢献するだろう。


ズーム


 歯周病 歯と歯茎のすき間への細菌感染により、歯茎がはれたり膿(うみ)がたまって歯を支える歯槽骨が溶けてしまう病気。症状が進行すると歯が抜ける。細菌が気管に入って肺炎を起こしたり、血管を通じて心臓に悪影響を及ぼすなど全身の疾患につながる。日本人の成人の約8割が発症しているといわれる。進行を早める危険因子として、喫煙、糖尿病が指摘されている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年08月03日 更新)

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