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性同一性障害は全員に保険適用を 全国初手術者 早急な制度改善訴え

乳房を切除する手術を執刀した岡山大病院の難波祐三郎教授(左)と話す当事者

 4月から公的医療保険が適用された、心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)の人への性別適合手術で、全国で初めて保険適用手術を岡山大病院(岡山市)で受けた当事者が10日、山陽新聞社のインタビューに応じた。治療を終えて「晴れ晴れとした気持ち」と振り返る一方、保険がきく人が限られるなど制度の課題を挙げ「全員が適用されるよう早急に改善してほしい」と訴えた。

 当事者は24歳の会社員で兵庫県在住。4月初旬、同病院ジェンダーセンター長の難波祐三郎教授の執刀で、乳房を切除し、女性から男性の体にする手術を受けた。退院後、この日は抜糸で同病院を受診。「乳房がなくなり晴れ晴れとした気持ち。これまで会社の同僚から温泉に誘われても胸を気にして断っていたが、これからはこうした付き合いができる」と笑顔を見せた。

 現行の医療保険制度では、保険診療と自由診療の併用を原則禁じているため、自由診療のホルモン療法を受けている当事者の手術費用は全額自己負担となる。

 取材に応じた当事者はホルモン療法を受けていなかったため適用されたが「大半の当事者が受けているので、適用されないのはおかしい」と訴える。

 法律で性別を変更するには子宮や卵巣、精巣を摘出したり、陰茎を切断したりする手術を受ける必要があり、この当事者も「女性の生殖器を摘出する手術を受け、戸籍の性別を男性とすること」をゴールにしているという。

 国際的には性別変更に手術要件を設けていない国が多い中、国内では条件撤廃の是非に関する動きが活発化している。

 「私の場合は手術要件に関係なく、そもそも子宮などがあるのが嫌なので摘出したいと考えているが、法律に対する考え方は当事者によって異なると思う。今回の保険適用スタートを機に、さまざまな議論が交わされることを期待したい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年05月11日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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