文字 

(5)地域で暮らす障害児・者の皆さんと共に 旭川児童院地域療育センター所長 村下志保子

村下志保子所長

 重症心身障害児(者)の入所施設として1967年に開設した旭川児童院では、開設当初から外来診療を行い、また入所できなかった重症心身障害児(者)の方の在宅訪問を行いました。岡山市を中心に県内はもとより、中国、四国、九州など近県の在宅重症児(者)に対し、医師・保健師などの専門家でチームを編成し、不定期ではありますが、訪問療育指導を実施してきました。

 このような実績を踏まえ、岡山市は全国に先駆けて77年、重度心身障害児に対する「訪問療育指導事業」を開始し、旭川荘に委託しました。事業内容は、医師・保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・保育士らによる家庭訪問、外来相談、電話相談などです。この岡山市の事業により在宅訪問システム(図参照)ができあがり、2006年まで実施されました。

 現在は、障害者総合支援法に基づく国の制度や各自治体からの委託事業を組み合わせ、地域療育センターと地域活動支援センターにおいて、さまざまな障害児者の方の地域生活を総合的に支援しています。

 地域療育センターでは、重症心身障害児(者)だけでなく、出産後、新生児集中治療室から退院するとき▽障害があると告知されたとき▽自宅での生活に不安があるとき―などにも相談を受けます。障害がある方が地域で生活するには、多くの場合、福祉サービスの利用が欠かせません。さまざまなサービスを理解し、利用方法を知るため、相談支援専門員のアドバイスが必要です。

 相談に当たるのは、相談支援専門員の資格を持った保健師や看護師、社会福祉士らです。ご家族の不安に寄り添いながら、自宅で安心して生活ができるように支援します。

 重症心身障害児(者)の保護者を対象に、11年と15年に実態調査を行いました。利用したい福祉サービスを質問すると、圧倒的に「短期入所を利用したい」という回答が多くみられました(グラフ参照)。短期入所とは一時的に施設を利用する制度で、希望する理由は、冠婚葬祭、旅行、介護疲れなどさまざまです。しかし、身近なところに利用できる施設がない▽利用したいときに利用できなかった―など改善を望む声がありました。

 医療型短期入所施設の不足が一因と考えられ、岡山県は「重症心身障害児(者)と家族の安心生活サポート事業」により、医療型短期入所施設の拡大を図りました。現在、岡山県内には17カ所の施設があります。(地図参照。施設リストは旭川荘療育・医療センターのホームページ=http://www.jidouin.jp/314/335.html=に掲載)

 このように重症心身障害児(者)の福祉サービスはある程度整いつつあります。しかし、いわゆる「医療的ケア児」は、人工呼吸器は使っていても知的障害はないなど、それぞれ状態に違いがあり、既存の体制では利用できるサービスも限られています。

 福祉サービスにつなげていくコーディネーターや支援者が必要です。国は医療的ケア児、重症心身障害児(者)の特性を理解した相談支援専門員を増やすため、コーディネーター研修や支援者研修の開催を進めており、当センターもこの研修会に協力しています。

 今後とも医療的ケア児、重症心身障害児(者)の支援者が増え、連携して支えていけるように活動を継続したいと思います。

     ◇

 旭川児童院地域療育センター(086―275―4518)。

 むらした・しほこ 新見高校、旭川荘厚生専門学院、岡山県公衆衛生看護学校を卒業し、旭川児童院地域療育センターに就職。地域活動支援センター、地域療育センター所長など歴任。昨年6月から旭川荘理事。保健師、相談支援専門員、介護支援専門員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年05月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ