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学童保育に作業療法士を職員採用 倉敷「二福ク」発達障害児支援へ

宿題をする児童に寄り添う作業療法士の山崎さん=倉敷市、二福のびのびクラブ

 発達障害のある児童が過ごしやすい環境を整えようと、倉敷市福田町古新田の放課後児童クラブ(学童保育)「二福のびのびクラブ」は、障害児者の生活支援の専門家・作業療法士を職員として採用した。日本作業療法士協会によると全国でも珍しいケース。特別な支援を必要とする児童が増加傾向にある中、先進的な取り組みとして注目されている。

 授業を終えた子どもたちが元気いっぱいに集まってきた。第二福田小の敷地内にある二福クラブ。支援員にあいさつしたり、友だち同士でふざけ合ったりとにぎやかな雰囲気に包まれる。

 そんな室内の一角。宿題に取りかかろうとしていた児童に、作業療法士の山崎愛美さん(30)=岡山市=が防音用の耳当てをそっと差し出した。発達障害の特性の一つで、周囲の音に苦痛を感じる「聴覚過敏」への対処法だ。

 「目に見えない障害は周囲に理解されにくい。それぞれの特性に合った成長をサポートしたい」と言う山崎さんは今月1日、二福クラブの支援員として採用された。平日の午後2時半~7時に勤務し、学習から遊びまで児童の生活全般の支援に当たっている。

 国内での活躍の場は病院や高齢者施設が多い作業療法士の力を学童保育の現場に生かす新たな試み。その背景には、発達障害などにより支援を必要とする児童の入所が増えている現状がある。

 倉敷市子育て支援課によると、4月1日現在、市内の全学童保育134カ所(児童計4966人)で要支援の児童は412人(8・3%)。2014年同期の252人(6・3%)から160人増加している。

 二福クラブでも児童160人のうち約1割が該当するといい、河北大樹所長は「これまでは発達障害の専門的な知識や技術を持った職員がおらず、支援に苦労していた。ノウハウを共有し、職員全体のスキルアップにつなげたい」と期待する。

 岡山県学童保育連絡協議会は16年度から、作業療法士を学童保育の現場に支援のコンサルタントとして派遣する事業を展開。県作業療法士会の楢原伸二会長は「採用はさらに一歩踏み込んだ印象。本来、保育や教育の現場でも活躍する能力を持ち合わせており、二福クラブの取り組みは好事例となり得る」とみている。

 作業療法士 身体、精神に障害のある人や、その可能性がある人を対象に作業療法を通じて機能の回復、維持を促す国家資格の専門家。略称はOT。日本作業療法士協会によると4月1日時点で、全国に8万9717人の有資格者がいる。日本では大半が病院や老人保健施設などに勤務している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年05月27日 更新)

タグ: 福祉

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