文字 

(5)進んでいる関節リウマチの薬物療法(下) 倉敷成人病センター副院長・リウマチ膠原病センター長 吉永泰彦

倉敷成人病センターのリウマチ教室・市民公開講座では療養生活に役立つ自助具の紹介なども行われる

OKAYAMAリウマチネットワークのサイト

岡山県内の膠原病患者たちが情報交換し、交流を深めている「ふれ愛の会」=2016年6月の創立30年記念総会

岡山県難病医療連絡協議会のサイト

 ■分子標的型抗リウマチ薬

 前回お話しした生物学的製剤は全て注射剤(点滴または皮下注射)で、後発品(バイオシミラー)が登場しても、いまだに高価です。生物学的製剤に劣らない有効性のある経口剤が待望され、登場したのが分子標的型抗リウマチ薬です。

 俗に“飲むバイオ”と呼ぶ人もいますが、生物学的製剤ではなく「合成抗リウマチ薬」です。生産コストは生物学的製剤より安いはずですが、現時点の薬価はまだ生物学的製剤並みです。生物学的製剤と同様、炎症を起こす特定の分子を狙った「分子標的薬」です。

 現在、わが国でリウマチに承認されている分子標的型抗リウマチ薬は、トファシチニブとバリシチニブの2剤があり、どちらも「JAK(ジャック)阻害剤」という種類の薬です(前回の表参照)。帯状(たいじょう)疱疹(ほうしん)などの副作用があり、両剤とも3年間の全例市販後調査中です。

 ■リウマチ、膠原病(こうげんびょう)の患者会と医療施設間のネットワーク

 日本リウマチ友の会は1960年に発足した患者会で、全国に1万1千人、岡山県にも200人を超す会員がいます。6月10日には鳥取県米子市で同会の第58回全国大会が開催されます。日本のリウマチ診療をリードしている慶応大学リウマチ・膠原病内科の竹内勤教授が「リウマチ治療の現在(いま) 未来(これから)」と題して講演されます。

 当院のリウマチ膠原病センターに所属する医師4人全員が日本リウマチ学会指導医、整形外科医5人全員が同学会専門医です。加えてリハビリ科(作業療法士6人、理学療法士9人)、薬剤師(日本リウマチ財団認定薬剤師4人)、看護師(同財団登録ケア看護師7人)、医療ソーシャルワーカーなど、多職種でチーム医療を実践していることが評価され、2009年に「日本リウマチ友の会賞」を受賞しました。

 また2005年より、各職種の講師による「リウマチ教室」を毎月、原則第4木曜の午後3時から約1時間、院内で開催しています。当センターホームページ(http://www.fkmc.or.jp/medical/rheumatism)でご案内していますので、ぜひご参加ください。

 岡山県内どこに住んでいても、リウマチの的確な治療が受けられることを目指して、2010年に医療施設間のネットワーク「OKAYAMAリウマチネットワーク」(https://sites.google.com/site/okayamaranet/)ができました。岡山大学病院を拠点病院とし、当院を含む中核病院8施設や開業医の先生方が参加しています。

 「膠原病」は関節リウマチを含む20余りの疾患群であり、過半数は「難病」に指定されていますが、リウマチと同様、薬物療法が進んでおり、もはや「難病」とは言えないものが大部分です。「全国膠原病友の会」(http://www.kougen.org)は、1971年に結成され、5千人を超す会員がいます。その岡山県支部「ふれ愛の会」(松井玉恵会長)は1987年、当時岡山大学講師だった宮脇昌二医師(現在、当院学術顧問)の指導で設立され、約100人の患者が参加しています。

 膠原病を含む難病を診療する岡山県の医療施設間のネットワークとして、「岡山県難病医療連絡協議会」(http://okayama-nanbyo.jp)があります。1999年に県によって開設され、事務局は岡山大学脳神経内科学教室に置かれ、当院を含む16の協力病院が参加しています。

 世の中には医療情報があふれ、患者会や医療講演会に参加しなくても、インターネットなどで簡単に情報を入手できますが、正しい情報か否かを自分で判断するのは困難です。患者会や医療講演会に参加すれば、同じ悩みの方々と話し合い、最新の正しい情報を得ることができます。ぜひ積極的に参加されるようお勧めします。

     ◇

 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 よしなが・やすひこ 山口県立宇部高校、岡山大学医学部卒、同大学院医学研究科修了。医学博士。岡山赤十字病院、尾道市立市民病院、岡山大学病院、南岡山医療センターなどを経て倉敷成人病センター勤務。2004年からリウマチ膠原病センター長、13年から副院長。岡山大学医学部医学科臨床教授。日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本内科学会中国地区評議員、指導医。日本腎臓学会指導医、日本透析学会専門医。日本脊椎関節炎学会理事。日本リウマチ友の会理事。ふれ愛の会顧問。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年06月04日 更新)

ページトップへ

ページトップへ