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梅雨時の熱中症に注意を 子どもと高齢者の対策聞く

「高齢者や持病のある人は特に熱中症予防を心掛けて」と呼びかける津山中央病院の萩岡信吾医師

「保護者や周囲の大人が子どもの熱中症に気をつけることが大切」と訴える岡山市立市民病院の今城健二副院長

 じめじめうっとうしい梅雨シーズンは熱中症の危険度も高まる。梅雨の晴れ間の強い日差しを浴びるだけでなく、室内にいても、湿気の影響で体の熱が逃げにくくなり、自分でも気づかないうちに熱中症に陥ることがある。特に体温調節の機能が衰えている高齢者や、機能が未成熟の子どもたちは要注意だ。熱中症患者の診療経験が豊富な岡山県内の医療機関の医師に、熱中症を見極める兆候や応急処置、予防のための対策を尋ねた。

高齢者の場合 体温調節できず脱水症に
萩岡信吾 津山中央病院麻酔科部長・手術センター長


 岡山県北部一帯の救急患者を受け入れる津山中央病院(津山市川崎)でも、梅雨の6月は暑さがピークの7月、8月に次いで熱中症患者が多い。麻酔科部長・手術センター長の萩岡信吾医師は「高齢者は体温調節機能だけでなく暑さを感じる能力も低下している。独居の方も多く、訪問した民生委員などが初めて本人の熱中症に気づくケースもある」と警告する。

 通常、成人は体内の水分量が体重の60%程度に保たれているが、高齢になると次第に水分が失われ、50%を切るようになる。もともと脱水症を起こしやすくなっているのだ。

 熱中症の症状(表上参照)の中でも、汗が出なくなる段階まで進むと危ない。体温を下げる汗が出ないということは、体が自力で体温を調節できなくなっている状態であり、積極的に治療して体温を下げてやる必要がある。救急車を呼ぶ方がいいという。

 一時的なめまいやこむら返り、吐き気くらいの症状であれば、応急処置で様子をみることもできる。涼しい場所に移動して衣服を緩め、太い血管が体表近くを通る首筋、脇の下、太ももの付け根などを氷や冷却剤で冷やしてやる。水でぬらして風を当てるだけでも気化熱によって体温を下げられる。それでも症状が改善せず、持続するようなら、やはり受診が必要になる。

 意識障害のみられる重症患者はICU(集中治療室)で治療する。特に、全身の血管に微小な血栓が生じるDIC(播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群)を起こしてしまうと生死に関わる。人工呼吸をしたり、大量の点滴や緊急の血液透析を施したりして、DICによる多臓器不全を防ぐ治療が中心になる。

 熱中症の予防では、こまめな水分摂取が基本。水分とともに適度な塩分も含まれるスポーツドリンクや経口補水液が勧められる。ただし、心臓病や腎臓病などで水分制限を受けている人は、主治医と相談し、慎重に摂取することが求められる。天候によっては外出を控え、室内でもエアコンで温度・湿度を調節するなど、いっそう注意しなければならない。

 十分に睡眠を取り、食事の栄養バランスにも気を配って、体調を整えておくことも予防になる。熱中症の危険度には、気温だけでなく湿度がより大きく関与している。湿度を反映した「暑さ指数」は環境省の「熱中症予防情報サイト」などで発表されており、リアルタイムで危険度をチェックできる。

 熱中症予防5カ条(表下参照)をまとめた萩岡医師は「重症化しないよう、積極的な予防が何より大切」と呼びかけている。

子どもの場合 屋外活動、大人の警戒必要
今城健二 岡山市立市民病院副院長


 体温調節機能が十分に発達していない子どもも熱中症になりやすい。自分の言葉で体の不調を訴えたり、自力で応急処置したりすることが難しい乳幼児は特に注意が必要だ。岡山市立市民病院(岡山市北区北長瀬表町)の今城健二副院長は「大人が子どもを見守り、熱中症の予防と早期発見に気を配ることが欠かせない」と指摘する。

 子どもの熱中症は、体育の授業や部活動、遠足といった学校での屋外活動中や、外遊びの際に起こるケースが目立つ。日射を受けて高温になった地表は輻射熱(ふくしゃねつ)を発し、背が低く地面に近いところにいる子どもやベビーカーの赤ちゃんは、大人に比べてより大きな影響を受ける。

 多くの子どもは遊びやスポーツに夢中になるあまり、暑さを忘れてしまう。今城副院長は「大人が思っている以上に子どもたちは“暑い環境”にさらされている。常に注意してほしい」と、子ども目線での警戒を呼びかける。

 予防策としては、小まめな水分補給や休憩を心掛ける▽熱のこもらない服や直射日光を避けるための帽子を着用する▽暑い日や体調がよくない日は無理に運動しない▽屋内では窓を開けたり、エアコンを使ったりして室温・湿度を調節する▽普段から適度に運動して汗をかく習慣をつける―ことなどを挙げる。

 めまいや顔のほてり、筋肉の痛みといった症状は、子どもの熱中症でも初期段階にみられる。応急処置のポイントも高齢者とほぼ同様だ。重症化すれば生命に危険を及ぼすこともある。意識がない、返答がおかしい、自力で水が飲めない―といった深刻な症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診する。

 短時間で一気に温度が上昇する自動車の車内などでは、毎年のように乳幼児が熱中症の犠牲になる悲劇が報じられる。今城副院長は「買い物などの際、『少しの間だから』と車内に子どもを放置すると、取り返しがつかない。大人が『このくらいなら大丈夫』と思う程度の暑さでも、子どもは熱中症になってしまうことがあることを忘れないでほしい」と訴える。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年06月04日 更新)

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