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病と闘い「希望」の2児出産 願い込めたビューティフルネーム

成望ちゃんの誕生を喜ぶ裕子さんと陽希ちゃん

 「命を大切にする優しい人に育ってほしいですね」。子宮がんが巣くう体でありながら5月28日、第2子となる長女を無事出産した裕子さん(40)=岡山市東区=は、長男の陽希(はるき)ちゃん(3)ともども喜びをかみしめた。

 子宮がんの患者が出産を望む場合、再発のリスクを考慮して体外受精を選択し、出産後は子宮を摘出する人が多いだけに、主治医である岡山中央病院(同市)の江口勝人周産期センター長は「自然妊娠で2人も出産するのは全国でも極めて珍しい。奇跡の連続ですよ」と話す。

 裕子さんに病気が見つかったのは2011年5月。2カ月前に結婚したばかりだった。「あまりに突然の宣告で涙すら出てきませんでした」と振り返る。

 その時、江口医師から提示された治療法は、子宮を全摘するか、ホルモン療法かの二つ。子宮を取れば完治はするが、子どもを産めなくなる。子宮を残すホルモン療法だと子どもは産めるが、治療効果が不確かで、常に再発を心配しながら暮らしていくことになる。

 裕子さんはホルモン療法を選択し、3カ月ごとに再発していないかの検査を続けながら小さな命が宿るのを待ち、3年後に長男を、さらにそれから4年がたって長女を授かることができた。

 「長女の名前は成望(なるみ)にしました。お兄ちゃんの『希』の字とこの子の『望』を合わせて『希望』になります。どうか、子どもたちに明るい未来が待っていますように、って」と笑顔を見せる裕子さん。いつ、がんが再発するか分からない。不安は今もこの先も拭えないが、親の願いを込めた“ビューティフルネーム”は家族への、そして自らへのエールのように思える。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年06月08日 更新)

タグ: がん女性お産岡山中央病院

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