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糖尿病患者尿から腎機能悪化予測 岡山大院教授ら「糖鎖」量で判定

和田淳教授(左)と、三瀬広記医員

 岡山大大学院の和田淳教授(腎・免疫・内分泌代謝内科学)と三瀬広記医員(同)らの研究グループは、糖尿病患者の尿に含まれる「糖鎖」の量で、腎臓の機能が将来悪化しやすいかどうかを予測できることを突き止め、21日、米科学誌電子版に発表した。腎機能が低下して人工透析が必要となるケースが多い「糖尿病腎症」の予防とメカニズム解明につながる可能性がある世界初の成果という。

 グループは、バイオ企業のグライコテクニカ(横浜市)が開発した糖鎖解析機器に着目し、2012年度から腎機能との関連を調べる臨床研究を進めてきた。岡山大病院など岡山県内8病院で、糖尿病の大部分を占める2型糖尿病の患者675人の尿を採取して4年間追跡調査。その結果、3種類の糖鎖でそれぞれ排出量が多かった人や1種類の糖鎖量が少なかった人は、腎機能が4年前よりも30%以上低下するか、透析が必要な状態になっていた。

 グ社の機器は、特定の糖鎖と結合する45種類のタンパク質・レクチンを並べたプレート。尿1滴に当たる20マイクロリットル(マイクロは100万分の1)を垂らすだけで糖鎖量を短期間で測定できる。岡山大と同社はこの判定手法に関する特許を出願中で、実用化に向けた検討も進めている。

 三瀬医員は「腎臓病の悪化が予測できることで、より説得力を持って患者への生活習慣病の指導や治療が進められる。今後は糖鎖量の違いと腎臓組織との関連も調べていきたい」としている。

 糖鎖 糖が鎖状につながった化合物。タンパク質やDNAに続く第3の生体高分子とされる。免疫やホルモン分泌、発がんなどさまざまな生体機能に関わっているが、構造が複雑なことなどから測定が困難で腎臓病や糖尿病での研究は進んでいなかった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年06月22日 更新)

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