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血液調べがん原因遺伝子変異特定 岡山大病院、7月から新検査

 岡山大病院(岡山市)は7月、がん患者の血液から、がんの原因となる遺伝子変異を特定する新たな検査を始める。わずか20ミリリットルの採血で、一度に73の遺伝子の状態を調べることができる。身体的負担が軽く、繰り返し検査でき、最新の情報を基に効果的な治療戦略を立てられる。検査の実施は中四国の病院では初めて。

 患者の遺伝情報(ゲノム)を基に、最適な薬や治療法を選択する「がんゲノム医療」の取り組み。リキッドバイオプシー(液体生検)と呼ばれる検査法で、がん細胞から血液中に放出されたDNAのうち、発症に関係する変異を調べる。肺がん、乳がん、大腸がんなどに関係する73の遺伝子に起きた変異が分かるという。

 米ベンチャー企業が開発した遺伝子解析技術で、血液を米国に送ると10日程度で結果が判明する。検査費の患者負担は1回目が約41万円、2回目が約31万円。

 病変部からがん組織を採取する現在の方法では、採取部分しか分からない上、痛みを伴うなど体への負担も大きかった。リキッドバイオプシーで全身を巡る血液を調べれば、転移を見つけられる可能性があるほか、再検査によって治療薬の投与に伴う変異をタイムリーに把握できるという。

 同病院ゲノム医療総合推進センターの豊岡伸一教授(呼吸器・乳腺内分泌外科)は「肺がん治療薬のイレッサといった高い治療効果を発揮する薬も一定期間を過ぎれば、がんは遺伝子変異によって新たな耐性を持ち、効果が低くなることが多い。新たな検査法によって患者に対し最適な薬を選ぶことができる」と話している。

 がんゲノム医療 がん患者の遺伝子を調べ最適な薬や治療法を選ぶ医療。現在の臓器別治療より効果的な治療法になると期待されており、厚生労働省が推進している。がんゲノム医療を全国的に実施するため、今年2月、中心的な役割を果たす中核拠点病院に岡山大病院、京都大病院(京都市)など11施設を選んだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年06月28日 更新)

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