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(7)膠原病治療の発展 倉敷成人病センター・リウマチ膠原病センター部長 相田哲史

相田哲史部長

 ■膠原病(こうげんびょう)とは

 前回まで3回にわたり、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスの最新治療について紹介させていただきました。これらの疾患は「膠原病」というグループに属していますが、「膠原病」と言われても、よく知らない人が多いのではないでしょうか。

 「心臓病(心疾患)」と言えば、実際は「心臓病」という単一の病気があるわけではなく、「急性心筋梗塞」や「狭心症」など心臓にかかわる病気のグループを指すことは理解しやすいと思います。

 しかし、膠原病が難しいのは、病気が特定の臓器にだけ起こるものではなく、関節、筋肉、皮膚、あるいは内臓などさまざまな臓器・組織に起こるためです。歴史的には1942年、クレンペラーという米国の病理学者が病気が起こった病理組織を検査したところ、体を構成する細胞を結びつける「膠原線維」に共通する病変があることに気づき、膠原病と名付けました。

 当初は、(1)関節リウマチ(2)全身性エリテマトーデス(3)強皮症(4)多発性筋炎/皮膚筋炎(5)結節性動脈周囲炎(6)リウマチ熱―の6種類の病気が膠原病に含まれました。現在は20余りの疾患群となっています(表1参照)。リウマチ熱は細菌が原因と判明し、現在は膠原病から外されました。

 また、膠原病は病気の起こる場所から捉えると、膠原線維を含む結合組織に病変が生じることから、「結合組織病」に含まれることもあります。結合組織は皮膚や関節、筋肉、血管など体の至る所にあり、膠原線維のほか、線維芽細胞や基質と呼ばれる成分などを含み、細胞同士を結びつけています。細胞に栄養を与えたり、細胞の老廃物を排除したり、異物の侵入を防いだり、傷ついた細胞を修復したりする働きもあります。

 さらに、膠原病を症状から捉えると、関節や骨、筋肉などの運動器に痛みがみられることから、「リウマチ性疾患」と呼ばれます。病気の発症様式から捉えると、自分の体の組織を見誤って攻撃することにより発症するため、「自己免疫疾患」と呼ばれます。このようにさまざまな呼称が重複し、より捉え難い疾患群だと思われてしまうのです(図参照)。

 病気を理解するために、膠原病として全体を捉えることも必要ですが、治療を計画する上では、疾患群の中のどの病気であるかを捉えることが必要です。

 ■新たな治療薬の登場

 膠原病の多くの病気には、1960年代からステロイド薬が使用されてきました。ステロイド薬は、人体が腎臓の上にある副腎から分泌するステロイドホルモンを化学的に合成した薬です。結合組織での炎症を鎮めたり、免疫反応を抑制することができます。

 しかし、ステロイド薬のみでは症状をコントロールできない場合や、薬の副作用のため十分量を使用できない場合もあります。そのような際には、免疫抑制剤や生物学的製剤などを併用し、病気をコントロールしていくことができるようになってきました。

 2000年以降、従来からステロイド薬に併用されてきた免疫抑制剤が保険適応となり、また主に関節リウマチに先行して使われていた生物学的製剤も、その作用機序の共通性から、他の病気にも応用されるようになりました(表2参照)。

 バイオテクノロジーの進歩に伴い、病気のメカニズムや原因が徐々に解明されてきており、新たな治療も期待されます。膠原病あるいは今まで耳にしたことのない病名で診断されると、不安になるかもしれませんが、同じ病気でも病状はさまざまです。主治医の説明をよく聞いて、自分の病気に合った治療法を選択しましょう。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 あいた・てつし 岡山県立井原高校、香川医科大学(現香川大学医学部)卒。医学博士。岡山大学病院、尾道市立市民病院などを経て、2008年から倉敷成人病センターリウマチ膠原病センター勤務。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医・中国支部評議員。日本リウマチ学会専門医・指導医。岡山大学医学部医学科臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年07月02日 更新)

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