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院内コンサートで闘病患者応援 倉敷中央病院薬剤師の阿曽沼さん

「演奏を通じて患者の皆さんを応援したい」と話す阿曽沼さん

七夕にちなんだ曲を披露した270回目の室内楽コンサート=1日

 幼少期からバイオリンを続ける倉敷中央病院(倉敷市美和)の薬剤師・阿曽沼和代さんが長年、院内で患者向けの室内楽コンサートを開いている。友人らと月1回ほど企画し、今月初旬で通算270回を記録。活動の原動力は「闘病中の人たちを音楽の力で少しでも応援できれば」という思いだ。

 阿曽沼さんは大阪府出身で、バイオリンを手にしたのは4歳の時。クラシック音楽好きの祖父から誕生日にプレゼントされた。練習を重ね、京都大薬学部時代には同大交響楽団でコンサートマスターを務めた。結婚後、医師の夫の同病院赴任を機に倉敷へ。自身も同病院で働き始めた。

 忙しい中でも、地域のアマチュアオーケストラに入って演奏活動を続けてきた阿曽沼さん。院内コンサートは、同病院の新棟ができた1992年の冬、患者サービスの管轄部署から依頼を受け、同僚らと入院中のお年寄りらを前にクリスマスソングを奏でたのがきっかけでスタートした。

 「明日の手術に向かう勇気をもらえた。今夜はぐっすり眠れそう」「気持ちが明るくなった」…。回数を重ねるごとに患者から寄せられる声が心に響き、「音楽を聴いている間だけでも病院にいることを忘れて前向きになってもらえるよう、演奏をもっと頑張らなければと思った」と継続の理由を明かす。

 1日に開催した270回目のコンサートでは、知人の琴奏者ら4人と共演し、七夕にちなんだ「きらきら星」「たなばたさま」など9曲を患者ら約50人に披露。入院中の60代女性は「曲や奏者の華やかな浴衣姿に季節感があり、気分が上がった。闘病の励みになる」と笑顔を見せた。

 最後に「皆さんが一日も早く元気になりますように」と述べて締めくくった阿曽沼さん。「協力してくれる音楽仲間への感謝を忘れず、質の高い演奏を目指して一層精進する」と、今後への決意を新たに会場を後にした。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年07月05日 更新)

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