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(8)婦人科低侵襲治療の保険拡大 倉敷成人病センター院長 安藤正明

ダビンチによるロボット支援手術では、術者はコンソールの映像を見ながら離れているロボットアームを操作する。2台のコンソールを使って術者が協力しながら手術することもできる

安藤正明院長

 ■腹腔鏡下手術

 婦人科領域においては、今年4月から子宮頸(けい)がんに対する腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術が保険適用となりました。

 今までは開腹手術のみが保険適用であり、一部先進医療が認められ、限られた施設のみで腹腔鏡下手術が行われていました。この手術の保険適用には病院の施設条件や手術件数による制限があり、腹腔鏡下手術とがん治療ができる専門の医師がいないと行うことができません。当院は全ての条件を満たしており、保険診療で行うことができる施設となっています。

 ■ロボット支援手術

 子宮体がん(1A期)と子宮良性疾患に対するロボット支援手術も保険適用となりました。

 これまで保険で認められていたロボット支援手術は、前立腺がんと腎臓がんの手術だけでした。今回、子宮体がん(1A期)と子宮良性疾患をはじめ、胃がんや肺がんといった患者の多い病気の手術を含む12件が新たに適用対象として追加承認されました。この中で良性疾患が保険で認められたのは、婦人科のみとなっています。

 ロボット支援手術の特徴は、手術における術者の手振れを防ぐ機能を備えていること▽ビューアをのぞき込む術者の視界は3次元の立体であり、肉眼で見ているのと同じように術野を把握できること▽術者の手の代わりとなる3本のアームは多関節で構成され、自在に動かすことが可能であること―などが挙げられます。

 現在、手術支援ロボット「ダビンチ」の国内の設置台数は約250台で、世界第2位です。米国では婦人科手術の約80%がロボット支援手術で行われており、日本でも今後さらに普及していくと考えられます。

 ■先進医療の拡大

 また、2017年から子宮体がん(1A期と1B期、2期)に対する腹腔鏡下傍大動脈(ぼうだいどうみゃく)リンパ節郭清術が先進医療となり、当院も先進医療施設として認定されました。非常に高度な技術が必要で、全国でも限られた施設のみ行うことができる手術方法です。

 これらの腹腔鏡下手術、ロボット支援手術の導入により、大きな傷をつくらず、小さな傷で手術を行うことができるため、痛みの軽減や入院日数の短縮が可能になりました。患者さんの早期社会復帰につながる非常に有効な治療です。

 当院には日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本婦人科腫瘍学会専門医が多数在籍し、良性疾患から悪性疾患まで、低侵襲医療を安心して受けていただけると自負しております。

 今後も「ひとりひとりにやさしく、最良の医療を」をモットーに、多くの患者さんに負担の少ない腹腔鏡下手術、ロボット支援手術を提供できるよう、取り組んで参ります。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 あんどう・まさあき 岡山朝日高校、自治医科大学医学部卒。岡山大学産婦人科教室などを経て1986年より倉敷成人病センター勤務。2015年より院長。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医。内視鏡手術の発展に貢献した医師に贈られる日本内視鏡外科学会の「大上賞」を受賞。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年07月16日 更新)

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