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避難生活アドバイス(中)心の健康 県精神保健福祉センター・野口正行所長

野口正行所長

 甚大な浸水被害に見舞われた倉敷市真備町地区を中心に、避難生活は長期化が予想される。被災者のメンタルヘルス(心の健康)のために、当事者はどんなことに留意し、周囲は何ができるのか。岡山県精神保健福祉センター(岡山市)の野口正行所長に聞いた。

 災害の発生時、直後の1週間程度は気が張っているため、持病の症状を訴える人はいても、新たな不調を訴えるケースは少ない。だが、避難所生活や被災家屋の片付けの疲れが出たり、仮設住宅に移る人が増える中で孤立感を覚えたりすると、うつ状態になったり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだりして不眠のほか、被災当時の恐怖を思い出してパニックになる人が出てくる。

 メンタルヘルスを保つために、被災者自身がまず心掛けたいのは周囲とのつながりだ。「大変だったね」「ご飯を食べている?」と互いに声を掛け合い、連帯感を絶やさないでほしい。つらい中でも人との交流は心を癒やしてくれるからだ。

 心の疲れは自覚できないことがあり、無理を続けると体調の悪化を招く。睡眠をはじめ休息はしっかり取るよう意識してほしい。ストレッチ体操、軽い運動など自分がこれまでに取り入れてきたリフレッシュ法を実践することも有効だ。

 家屋の再建や仕事、家計の見通しが立てられない不安が心の健康を損なう要因になることがあり、行政や企業の支援情報を被災者にしっかり届けることが大切だ。情報を届ける公的な仕組みづくりはもちろんだが、被災者同士は情報共有に、周囲の支援者は積極的な情報提供にそれぞれ留意したい。

 心の不調を感じた場合、避難所や被災地を巡回する保健師へ気軽に相談してもらうとともに、周囲も「○○さんの元気がなくなった」などと少しでも気になる人がいれば報告してほしい。必要であれば近隣の専門医につなぎ、心理療法や薬物で治療する。



 県精神保健福祉センターは被災者本人や家族から心の不調や悩みについて相談電話(086―201―0850、平日のみ)で受け付けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年07月17日 更新)

タグ: 精神疾患

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