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受精卵取り違え妊娠 香川県立中央病院 高松の20代女性が人工中絶

受精卵を取り違える医療ミスが発覚した香川県立中央病院=高松市番町

 香川県立中央病院(高松市番町)で昨年秋、不妊治療で体外受精を受けた高松市の20代女性に別の患者の受精卵を戻した疑いがあり、妊娠した胎児を人工中絶したことが、19日分かった。担当医が受精卵の培養中、容器を取り違えたのが原因という。

 受精卵の取り違えは2000年に石川県のクリニックで発覚したが、妊娠まで明らかになったのは初めて。

 松本祐蔵院長らによると、担当医(61)が昨年9月、女性の受精卵の発育具合を培養器から出して確認する際、女性の名前が書かれた容器のふたを誤って別人の受精卵が入った容器にかぶせて培養器に戻し、女性に移植させたという。

 女性は10月初旬に妊娠が確認されたが、担当医は発育具合などから「受精卵を取り違えた恐れがある」と松本院長に報告。女性は病院から事実を聞かされ、11月中旬に人工中絶した。

 19日会見した松本院長は「妊娠した喜びの絶頂に中絶ということになり、大変申し訳ない。事態を重く受け止めている」と陳謝した。

 女性は再び妊娠が可能という。別の女性には本人の受精卵が移植されていた。

 女性側は10日、精神的苦痛を受けたとして県に約2000万円の慰謝料を求め高松地裁に提訴。原告代理人は「話し合いを重ねたが誠意が感じられず、不本意だが提訴に踏み切った」としている。

 担当医や松本院長らは11月上旬、2度にわたり女性と夫に謝罪。夫は担当医らに「自分たちの受精卵の可能性はないか」と問い詰めた。病院側は、妊娠15週まで待てば判別できるが、中絶時の身体的負担が大きくなると説明。夫婦は同11日、妊娠9週目に中絶を選んだ。

 同病院は事故後、確認作業は複数で行う▽作業台に他の夫婦の容器を置かない▽容器にはふたのほか皿部分にも名前を記入する―との対策を講じた。

 日本産科婦人科学会は、石川県での受精卵取り違え発覚後、全国の生殖医療の実施機関に対し、再発防止へ識別作業の徹底を通知していた。

 同学会は「絶対あってはならないことが再び起き、深刻に受け止めている。近く理事会を開き対応を協議する」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年02月20日 更新)

タグ: 女性お産

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