文字 

(5)スポーツ支援からの仲間づくり 万成病院事務部長 河田晴雄

岡山シーガルズの選手たちも参加する「ドリームカップソフトバレーボール大会」

エム・ホールでは精神障がい者ソフトバレーボールチームと新体操の子どもたちがフロアを分け合って練習している

老人保健施設で働く岡野栞介護福祉員は高校時代、ソフトボール部キャプテンだった

河田晴雄事務部長

 ●地域づくりを担って

 万成病院は精神科医療からの地域づくりを目指しています。小林建太郎院長は「統合失調症や認知症を発症しても、一人の住民として生き生きと暮らしていける町へ。そんな町づくりを通じて、精神科医療の質が担保され、時代を担う医療人が育っていく」と話します。そして、スポーツには人と町を元気にする力があります。

 ●障がい者スポーツの支援から

 当院のスタッフが中心となり、2006年から「ドリームカップソフトバレーボール大会」を開催しています。精神障がい者と健常者の交流大会です。

 バレーボールのVリーグ女子「岡山シーガルズ」の選手たちも参加し、大会は熱い戦いとなります。シーガルズはいろいろな形で地域に貢献し、元気な岡山の原動力になってくれています。

 当院の元気発信基地として誕生したリハビリホール(エム・ホール)に元気な声が響きます。精神障がい者ソフトバレーボール県選抜チームの練習です。メンバーは、新見、備前など県内各地からエム・ホールに集まり、練習しています。

 宮田芳野監督は「このチームでバレーを始めて元気になり、社会に巣立った選手がたくさんいます。一番心強い後押しは家族の応援だと思います」「スポーツを続けていく中で仲間をつくり、体力・気力・自信がついていきます。団体行動の中で協調性、社会性を養い、心身ともに元気になって自立につなげていくことが目標です。チームが集まる場所を提供していただいていることに感謝しています」と、笑顔で語ってくれました。

 チームは今年も中四国ブロック大会で優勝し、10月の全国障害者スポーツ大会(福井県)への出場を決めています。

 隣のコートでは、5歳から中学3年生の子供たち約20人が新体操の練習をしています。当初、精神障がい者と接することに不安もあったようですが、専門職のスタッフが病気について説明し、一緒に練習してきました。今では子供たちの方から「入院している患者さんに新体操を見せてあげたい」「いっぱい練習して上手になりたい」「精神疾患の人たちも頑張っているから、私も頑張る」といった声が上がっています。

 10年前では考えられなかった光景です。

 ●万成地域スポーツ功労賞の設立

 「スポーツを通じた元気な岡山づくり」のために創設した「地域スポーツ功労賞」が、今年4年目を迎えました。障がい者スポーツ、岡山シーガルズと地元の学生スポーツを対象に毎年、功労者を表彰し、支援金を贈っています。

 当院に併設されている岡山リハビリテーションホームで働く岡野栞介護福祉員は、元気な声と笑顔で入所者の人気者です。彼女は地元の創志学園高校時代はソフトボール選手で、インターハイ初優勝時のキャプテンでした。高校卒業後も実業団のトップチームで活躍していました。

 母校が「地域スポーツ功労賞」を受賞したことで当院のことを知り、介護職員として勤め始め、今は介護福祉士を目指して頑張っています。「介護をしながらたくさんの利用者とふれあえる。この職に出会えて本当に良かったです」と話してくれました。

 地域スポーツ支援のため、スポーツを続けながら働ける職場環境を提供したい。スポーツで培われた周囲への思いやり、鍛え抜かれた身体と強い意志を備えた職員になってほしい。こんな仲間が増えていく職場でありたいと思います。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 かわた・はるお 大手建設会社で多くの病院建設を担当。2002年6月に事務部長として万成病院に入職。一級建築士、医療情報技師。岡山県病院協会施設管理委員会委員長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年08月07日 更新)

ページトップへ

ページトップへ