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(1)ライフスタイルと生活習慣病 倉敷スイートホスピタル院長 松木道裕

松木道裕院長

 生活習慣病の多くは不適切な食生活、運動不足、喫煙など不健全な生活の積み重ねによって引き起こされます。ライフスタイルを見直すことなく放置していると、生活習慣病は重症化し、さらに合併症などを発症してきます。

 生活習慣病の発症・重症化は「健康長寿」を阻む大きな要因であり、支援・介護を受け始める時期や寝たきりになる時期を早めることになります(「生活習慣病の進行」参照)。予防するには、普段の生活の中で適度な運動、バランスの取れた食生活、禁煙などを行うことが大切です。

 生活習慣病には、メタボリックシンドローム(メタボ)を基盤とした肥満症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症などがあります。ライフスタイルが改善しなければ、動脈硬化が進展し、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)、慢性腎臓病(CKD)、脂肪肝などを引き起こします。

 特に、虚血性心疾患、脳卒中、慢性腎臓病を発症すると、生活機能は低下し、介護が必要な状態(要介護状態)となります。喫煙によって促進される動脈硬化は虚血性心疾患、脳卒中の発症リスクを高めます。さらに肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)を起こすことがあります。

 また、アルコールの多飲は脂肪肝やアルコール性肝炎の原因となります。その他、睡眠障害、骨粗しょう症、歯周病なども生活習慣病に含まれます。

 メタボは動脈硬化を促進する危険因子がいくつも重なる症候群で、生活習慣の乱れによって起こる内臓肥満が基盤にあります。内臓の肥満(脂肪)細胞から分泌される生理活性物質(アディポカイン)に異常が起こり、インスリンの働きが悪くなります(=インスリン抵抗性)。その結果、糖尿病予備軍である耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧など動脈硬化の危険因子が集積しやすい状態になります。

 健康診断(40歳から74歳までは特定健診)では、メタボの概念が導入されています。へそ位置の腹部CT検査で内臓脂肪面積が100平方センチ以上あれば内臓肥満と診断します。簡易法としては、へそ位置の腹囲を計測します。男性85センチ以上、女性90センチ以上あれば内臓肥満です。さらに脂質、血圧、血糖値のいずれか2項目以上に異常があればメタボと診断します(「メタボの診断」参照)。

 特定健診では、メタボなどで生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による予防効果が期待できる場合、特定保健指導として専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)から生活習慣を見直すサポートを受けることができます。

 支援の基本は内臓脂肪を減らし、集積する耐糖能異常、高血圧症、脂質異常症を改善することです。摂取カロリー、アルコール量、運動量などの生活習慣に介入することが最も有効な手段です。食事・運動療法を行えば体脂肪量が減り、特に内臓脂肪は皮下脂肪に比べ速やかに低下します。内臓脂肪を減らすことでアディポカインの分泌異常は是正され、メタボ改善にも有利に働くと考えられます。

 食事療法としての1日の摂取カロリーは、標準体重(身長メートルの2乗×22)に25をかけた値(キロカロリー)が妥当と考えられています。極端な低エネルギー食で減量を行うと、体重は一時的に減少しますが、再び減量前の体重を超えてしまうリバウンドの心配があります。無理のない食事療法に運動療法を組み合わせ、体重を増やすことなく内臓脂肪を減らす努力が最も重要です。

 健康寿命の延伸は、毎日の食生活、運動習慣、喫煙、飲酒などの不健康な生活習慣を見直すことから始まります。心当たりがあれば、前向きに考えていきましょう。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 まつき・みちひろ 大分県立大分上野丘高校、川崎医科大学卒、川崎医科大学大学院修了、同大学講師、准教授、川崎医療福祉大学教授を経て2012年から現職。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年11月05日 更新)

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