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脊椎圧迫骨折 セメント注入で激痛解消 岡山済生会総合病院 慢性期にも効果

吉田秀行医長

脊椎圧迫骨折の経皮的椎体形成術を受けた患者のエックス線画像。左が腹部、右が背中=岡山済生会総合病院提供

 激しい痛みを伴い、お年寄りの寝たきり原因にもなる脊椎(せきつい)(背骨)の圧迫骨折。患部に医療用のセメントを注入する「経皮的椎体形成術」という治療が効果を挙げている。2月から半年間で20人余を治療した岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)の吉田秀行・脳神経外科医長は「治療時にうつぶせになるのもつらい痛みが注入直後にほとんどなくなる」と語っている。

 背骨の圧迫骨折は、首から腰まで24個ある椎体のうち数個が押しつぶされる。転倒や交通事故などで背骨に強い衝撃を受けた際のほか、「高齢者は洗面や、トイレで立ち上がるときに骨折することもある」と吉田医長。特に、女性に多い骨粗しょう症の人は骨密度が低く折れやすい。

 折れた背骨はつぶれ、寝返りやベッドから起き上がるのもつらい痛みを伴う。一般的な治療は鎮痛剤などで痛みを和らげ、患部をコルセットで固定しベッドで1―2カ月間安静にする。だが、お年寄りは回復が長引き、その間に足腰が弱って寝たきりになったり、認知症を患うこともある。

 経皮的椎体形成術はエックス線の画像を見ながら、患者の背中から椎体の内部に直径2ミリの針を刺しセメントを注入。セメントは約30分で固まり、骨折個所を補強する。局所麻酔で済み患者の体の負担が軽く、高齢者にも適用できる。

 同病院は1泊2日で治療。6月に受けた岡山市の60代女性は「痛みが激しく車いすで来院したのに治療2時間後には歩いてトイレに行けた」と喜んでいる。

 吉田医長によると、この治療は1980年代後半に欧州で始まり、米国で「安全ですぐ効く治療」として広まった。国内には5―6年前導入。岡山大病院(同市北区鹿田町)なども行っている。いち早く始めた医療機関では、9割近くの患者の症状が著しく改善したという。

 ただ、健康保険がまだ適用されず、治療費は全額患者負担。岡山済生会総合病院では治療1回30万円で、入院代などを含め35万円程度になる。

 また、首に近い第四胸椎より上部の圧迫骨折には行っていない。足の痛みやまひ、排尿・排便障害など神経症状を伴う場合は全身麻酔で椎体を人工物に換える手術が勧められる。セメントのアレルギー反応で血圧が下がったり、セメントが椎体外に流れ肺塞栓(そくせん)を起こすなどの合併症もわずかだが国内で報告されている。

 背骨の圧迫骨折はエックス線撮影だけでは診断が難しく、発見が遅れる患者も珍しくないという。吉田医長は「この治療は慢性期にも効果があり、なかなか治らない腰痛があれば相談してほしい」と呼び掛けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年08月10日 更新)

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