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電気刺激で脳梗塞抑制 重症化予防へ注目 岡山大大学院・伊達教授ら確認

伊達勲教授

馬場胤典研究員

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の伊達勲教授(脳神経外科学)と馬場胤典(たねふみ)研究員らのグループは、パーキンソン病治療などで行われている脳への電気刺激療法が、脳梗塞(こうそく)にも一定の効果があることをラットの実験で確かめ、19日から2日間の日程で岡山市で始まった日本分子脳神経外科学会で発表した。

 電気刺激療法はパーキンソン病の体の震えやこわばりを抑える効果が認められているが、脳梗塞では一部の医療機関でリハビリの一環として行われているだけ。実験では発症後、早期の電気刺激によって細胞死が減ることを確認、重症化を防ぐ新たな治療に向けた研究として注目される。

 馬場研究員らはラットの中大脳動脈を1時間半ふさいで半身まひの状態にし、1時間後に頭蓋(ずがい)骨の内側にある硬膜を電気で刺激。周波数と電流値を複数組み合わせて1週間流し続けた。その結果、細胞死した脳梗塞部分は電気刺激無しのラットに比べて最大で約半分に抑えられた。机の端など不安定な場所にラットを置いて行動を見ると、机にしがみつくなど手脚の動きにも改善が見られた。

 脳梗塞は重症化する時、血流低下に伴う細胞の壊死(えし)とは別に、細胞の自滅(アポトーシス)が起きる。電気刺激した脳では、自滅を抑える働きがある活性化したタンパク質が刺激無しに比べて約6倍になり、神経保護作用がある物質や新しい血管も増えていた。

 馬場研究員は「脳梗塞は発症直後の積極的治療の選択肢が少ない。電気刺激が脳梗塞に与える影響や改善のメカニズムを詳しく解明し、新たな治療方法の開発につなげたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年09月20日 更新)

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