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視覚障害原因 緑内障最多を裏付け 岡山大などのグループが全国調査

 国内で視覚障害の原因となる疾患は緑内障が最も多いことが、岡山大と山形大の研究グループによる大掛かりな全国調査で裏付けられた。緑内障は自覚症状が乏しい一方、進行すると視力の回復が難しいため、グループは早期発見・治療に向けた定期検診の受診を呼び掛けている。

 調査は、岡山大大学院の白神史雄教授(眼科学)らが、身体障害者手帳の情報を管理する全国の都道府県や市などの福祉事務所の協力を得て実施。2015年度に新たに認定された18歳以上の視覚障害者のほぼ全員に当たる1万2505人(135事務所分)のデータを分析した。

 視覚障害の原因疾患は、視神経が損傷して視野が狭くなったり、かすんだりする緑内障が28・6%を占めて第1位。網膜の異常で視野が狭くなる網膜色素変性症14・0%、糖尿病の合併症の一種で失明につながる糖尿病網膜症12・8%、網膜の中心部に障害が生じ、視界がゆがむ黄斑変性症8・0%―などと続いた。

 同様の調査は1988年度以降、それぞれ別の研究グループが3回にわたり実施。いずれも7事務所を選んで紙の記録を調べる標本調査だった。今回、電子データのやりとりが可能になったことで大規模調査が実現。緑内障が最も割合が高いとの結果は過去の2回目の調査(2001~04年度)、3回目(07~09年度)と同じだったが、調査精度は大幅に向上したという。

 緑内障の割合は3回の調査(14・5~21・0%)より高まっている。白神教授と共に調べた岡山大大学院の森實祐基准教授(眼科学)によると、緑内障は加齢とともに増える病気で、社会の高齢化の進展が影響していると考えられるという。

 今回の調査対象とした視覚障害者の年代は80代が29・6%で最も多く、70代26・3%、60代17・3%と60歳以上が7割余りを占めた。森實准教授は「高齢で視覚に障害があると転んで寝たきりになったり自宅に閉じこもったりして、生活の質が大きく下がる恐れがある」と指摘し、緑内障の早期発見の必要性を訴える。今後地域ごとにデータを分析し、各地の福祉行政にも役立ててもらう考えだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年12月03日 更新)

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