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目の病気「加齢黄斑変性症」に注射の新薬 倉敷中央病院 レーザーと使い分け

加齢黄斑変性症の自覚症状のイメージ。見たい部分がゆがんだり(右上)、ぼやけたり(右下)、黒くなったり(左上)、不鮮明になる(左下)=ノバルティスファーマ提供

 物がゆがんで見えたり、視野の中心が暗くなる目の病気、加齢黄斑変性症は高齢者の主な視覚障害原因の1つ。その注射薬がここ1年で相次ぎ発売された。倉敷中央病院(倉敷市美和)の岡田守生眼科主任部長は「新たな治療法として広まるだろう」と話している。

 加齢黄斑変性症は光を感じる目の網膜の中心にある黄斑という部分に、年を重ねるとともに異常が起き、視力が低下する。50代以上の男性に多い。

 老化で黄斑が縮む萎縮(いしゅく)型と、網膜の外側から破れやすい新生血管が黄斑に伸び出血などを起こす滲出(しんしゅつ)型がある。萎縮型は進行が緩やかだが、滲出型は速く治療が必要になる。

 「以前は有効な治療が乏しかった」(岡田主任部長)が、光に反応する薬を注射後、レーザーで新生血管を狙い撃つ光線力学的療法(PDT)に2004年、健康保険が適用された。全国規模の使用成績調査の結果では、8割の患者で視力の低下を防げた。倉敷中央病院でも、これまでに200人以上の患者を治療してきた。

 一方、新薬のマクジェン(一般名ペガプタニブナトリウム)とルセンティス(一般名ラニビズマブ)は新生血管の成長を活発化させる物質の働きを抑える。4週~6週間に1回、白目の部分から眼内に注射する。点眼薬で麻酔するため、痛みはほとんど感じないという。治療は3カ月続け、その後は症状により行う。

 同病院は昨年秋発売のマクジェンに続き、ルセンティスを7月から60~80代の男女の患者数人に投与。ルセンティスはすべての症例で視力を維持するか、わずかに改善した。発売前の国内の臨床試験でも、約40人の患者がいずれも治療開始1年後に視力を維持し、うち3割は視力が改善していた。

 治療を担当する小林かおり部長は「PDTは主に視力の維持効果にとどまっていた。ルセンティスの長期的な成績はまだ不明だが、全例に対してではないものの視力改善効果が期待できる印象がある」と語る。

 ただ、眼内炎や脳卒中などの副作用の恐れもあるため、同病院は患者の希望や新生血管のタイプ、患者の全身状態などでルセンティスと、効果はやや劣るが全身的な影響がより少ないと考えられるマクジェン、PDTを使い分け、有効な治療方法を探っている。薬代が3割の患者負担分でマクジェンが1回約3万7000円、ルセンティスは約5万3000円と高額なのもネックだ。

 岡田主任部長は「今のどの治療でも視力を元通りに戻すのは難しく、いつ治療を始めるかも大切。片目だけに異常がある場合は、症状に気づきにくい。自分で片目ずつチェックし、ゆがみなどの症状があれば医療機関で検査してほしい」と呼び掛けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年10月12日 更新)

タグ: 高齢者倉敷中央病院

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