複合療法で食道がん腫瘍消失確認 岡山大大学院グループが臨床研究

藤原俊義教授(左)と白川靖博准教授

 岡山大大学院の藤原俊義教授(消化器外科)と白川靖博准教授(同)の研究グループは、がん細胞だけを攻撃する同大開発のウイルス製剤「テロメライシン」と放射線治療を併用した食道がん患者への臨床研究で、12人中8人の腫瘍が消失したことを確認した。体に負担の少ない新たな複合療法の実用化に向けた一歩で、17日から米サンフランシスコで開かれる米国臨床腫瘍学会で発表する。

 研究グループは、高齢による体力低下や他の病気を患うなどの理由で、手術や抗がん剤治療が難しい食道がん患者への新たな治療戦略を検討。放射線で破壊したがん細胞にテロメライシンを投与すると、がん細胞のDNAを修復するタンパク質を破壊し、がんの増殖を防ぐという基礎研究成果を踏まえ、2013年11月~18年1月、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で臨床研究を行った。

 対象は53~92歳の男女12人。食道がんにテロメライシンを1回1ミリリットル(ウイルス量は最大1兆個)注射し、放射線治療を6週間続けた。この間、テロメライシンを2回追加投与した。その結果、8人は肉眼と組織検査でがんが確認されず、3人は縮小が見られた。

 主な副作用として、発熱や白血球、リンパ球の減少はあったものの、重篤ではなかったという。治療後、食道がんの転移や他の病気などで8人は亡くなったが、現在も4人が生存している。

 テロメライシンは風邪ウイルスの一種・アデノウイルスを無害化して遺伝子を組み換え、がん細胞だけを破壊する。製造する同大発のバイオベンチャー・オンコリスバイオファーマ(東京)は、同様の手法を用い、実用化に向けた次のステップである臨床試験(治験)を岡山大病院などで行っている。

 藤原教授は「治験は4年前後で終える予定。効果が見られれば(治療を行いながら安全性などの情報を収集し、本承認を目指す)条件付き早期承認制度を活用し、患者への投与を始めたい」と話している。

(2019年01月15日 更新)

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