肺がん治療 最新の知見や本音 岡山で市民講座や交流会

各地の肺がん患者会からの参加者も交え、闘病体験や悩みを語り合った交流会=岡山城天守閣

肺がん患者・家族と医療者が互いのコミュニケーションを巡って討議した市民公開講座=岡山大学鹿田キャンパス

 岡山市で昨年12月と今年1月、肺がんの最新治療について学ぶ市民公開講座が相次いで開かれた。患者会と専門学会が主催し、どちらも医療者と患者が同じ演台に立ち、よりよい治療を納得して受けるための課題を話し合った。4日は世界各国でがん克服を呼び掛ける「世界がんデー」。身近な地域から医療者とがん患者の連携が進んでいる。

 昨年12月2日、岡山大学鹿田キャンパスで開かれた市民公開講座は、肺がん患者会の「ライオンハート岡山」と「ワンステップ」が共催した。岡山大学病院の専門医を講師に招き、肺がんが発生する仕組みや、がんの増殖に関わるドライバー遺伝子の検査など、最新の知見を教わった。

看護外来で不安解消

 パネルディスカッションでは、患者や家族、専門医、看護師が登壇し、互いのコミュニケーションをテーマに討議した。

 全国の患者・家族へのアンケート結果から、「厳しい言葉でも正直に話してくれる」「(患者の話を)途中で否定しない」など、よい印象の医療者がいる一方、「パソコンばかり見ている」「不安を訴えても頑張りましょうと言われる」など、残念な医療者もいることが報告された。

 パネリストの女性患者は「治療を受けた病院に看護師の外来があり、医師には言えないようなささいな悩みも相談できて、不安が消えた」と発表した。その場で聴講者に看護外来を知っているかどうか尋ねると、大半が存在を知らなかったことが分かった。

 実は、岡山大学病院にもがん看護外来がある。予約制で、医師の説明でよく分からなかったことや、どうしていいか迷うことなど、専門教育を受けた看護師に話を聞いてもらえる。会場から「利用したい」という声が上がった。

 岡山城天守閣を借りて開いた交流会にも、患者や家族、医療者が参加し、本音で語り合った。

自分で体の声聞く

 NPO法人日本肺癌(がん)学会などが1月20日、岡山大学Jホールで開いた市民公開講座にも、「ライオンハート岡山」の田中勇代表(57)がパネリストとして参加した。

 田中さんは小細胞肺がんの進行期と診断され、抗がん剤と放射線の治療を受けて寛解に至るまでの体験を発表した。「一緒に闘ってくれる」主治医を求めて受診した岡山大学病院では、説明を受けないまま、強い副作用が心配される量の放射線を照射されたことに納得できず、放射線治療を中断したと打ち明けた。

 再発を懸念していた主治医も、田中さんの覚悟を受け入れて治療を変更し、その後は二人三脚で回復へ向けて歩むことができた。田中さんは「治療行為は医療者に預けても、自分で体の声を聞くことが大切」と訴えた。

免疫療法は慎重に

 二つの市民講座では、昨年のノーベル賞をきっかけに脚光を浴びているオプジーボ(ニボルマブ)など、免疫療法として効果が確認された「免疫チェックポイント阻害剤」に大きな関心が寄せられた。

 従来の抗がん剤と異なるこの薬の特徴について、岡山大学病院腫瘍センターの久保寿夫助教らは「効く人では効果が長く維持される」などと解説した。

 患者からは「自由診療でオプジーボを使いたい」といった質問が寄せられたが、久保助教は「重篤な副作用が起こることがある」と注意した。副作用で免疫が暴走すると、治りにくい1型糖尿病、全身の力が入らない重症筋無力症などが出現しかねない。抗がん剤は通常、投与をやめれば回復するが、免疫療法の薬はすぐには作用が消えない。

 「主治医とよく相談し、納得できなければセカンドオピニオンを求めてほしい」。久保助教らは慎重に考えるよう促していた。

(2019年02月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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