古民家カフェで住民と交流 万成病院が月1回開催

万成病院のスタッフと共にレクリエーションを楽しむ「地域交流カフェこだま」の参加者

本格的な日本庭園もある古民家を改装し、地域の新たな交流の場になっている「こだまの杜」

 精神科の万成病院(岡山市北区谷万成)が毎月1回、近くの古民家で開いている「地域交流カフェこだま」が、病院と地域住民をつなぐ場として定着している。畳座敷のある古民家の落ち着いた雰囲気の中で、お茶を飲みながら医師や看護師らに気軽に健康について相談でき、認知症などの早期受診につながったケースも。地域にとっては空き家を活用した住民交流の場ともなっている。

 「ちょっとルールを変えたじゃんけんをします。私がグーやチョキを出した後、必ず勝つように手を出してくださいね」

 昨年11月中旬に開かれた「こだま」のレクリエーションで、万成病院の作業療法士・森安有岐子さんが約30人の参加者に呼び掛けた。頭を使う簡単なゲームで、認知症を予防する効果が期待できるという。この日は手や足を動かす体操も行った。

 「こだま」は「呼べばこたえる仲間づくり」をイメージして命名。2016年4月、地元の谷万成町内会と協力し、近くの公会堂で始めた。18年4月、病院が買い取った築100年を超える空き家に移転し、「こだまの杜(もり)」としてリニューアルオープン。約640平方メートルの広い敷地には日本庭園もあり、庭園を望む20畳以上ある母屋の広間でカフェを開いている。

 院内の医師や看護師、作業療法士らでつくる「認知症プロジェクトチーム」がプログラムを企画。認知症の基礎知識やメンタルヘルス、高齢者を狙った特殊詐欺の防ぎ方など、専門職が毎回さまざまな話題を提供するほか、半年に1回、血圧や骨密度などの健康チェックも行う。

 診察室とは違い、開放的な場で住民と専門職が緩やかに出会う機会でもある。いつも参加している女性(76)は「普段なかなか会わない近所の人と一緒におしゃべりできる。日頃気になっている健康のことも、病院スタッフに尋ねやすい」と言う。

 病院には精神科以外に心療内科や歯科もあり、森安さんは「さまざまな担当の職員と顔見知りになり、もっと病院を身近に感じてもらいたい」と話す。カフェで認知症の簡易検査を受けたことがきっかけで、病院の受診につながった人もいるそうだ。

 空き家だった古民家を活用したことも、地域での定着に役立っている。近所で生まれ育った谷末子さん(90)は「子どもの頃、この家にお邪魔して鬼ごっこなどで遊んだ。空き家になって寂しい思いをしていただけに、またみんなで訪ねることができてうれしい」と喜ぶ。

 プロジェクトチームリーダーの石丸信一看護副部長(48)は「今後、病院を受診している認知症の人の家族が交流したり、病院のサテライト的な場として、医療について専門的な相談ができるようにしたりと、さまざまな活用方法を検討していきたい」と話している。

(2019年02月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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