(7)関節リウマチ患者の不安を取り除くために~教育入院~ 倉敷スイートホスピタル副看護部長 淺野由珠子

淺野由珠子副看護部長 

 関節リウマチは慢性疾患であり、完全治癒は難しく、長期に付き合うことが必要となります。しかし、治療薬の目覚ましい進歩により、痛みや腫れがほとんどない状態である「寛解」を目指すことができるようになり、患者さんの生命予後も改善しています。

 一般的な薬物治療は、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬が第1選択となりますが、症状が改善しない場合には生物学的製剤やJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬という薬剤を使用します。これらの薬は、点滴、皮下注射、内服薬と投与方法はさまざまですが、著しい効果がある一方、感染症などの副作用があり、ほかにも注意すべきことが多くあります。

 外来診療の限られた時間の中では詳しい説明が難しいため、当院は「教育入院」を実施しています。初めて関節リウマチと診断された方や、治療強化の必要な方はもちろん、治療上の悩みや不安を抱えておられる方、今一度関節リウマチのことをきちんと理解していただく必要がある方も対象となります。

 入院期間は、2泊3日または3泊4日です。関節リウマチの病態、リハビリ、薬剤、日常生活で気をつけることなど、医師をはじめ、看護師、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーが説明しています。

 外来時にも行うことですが、看護師は教育入院中に次のようなことについてご説明します。関節リウマチと上手に付き合うためのポイント=「安静」「保温」「睡眠・休息」「毎日の体調チェック」「禁煙」など▽日常生活で注意するポイント=「外出時はマスクをする・人混みは避ける」「手洗い・うがいの励行」「乾燥を防ぐ」「皮膚の清潔」「傷をつくらない」「ワクチン接種」「虫歯や歯周病の歯科ケア」「唾液の分泌を促すマッサージ」―などです。

 また、関節リウマチでは約90%の患者さんに足病変があると言われており、歩行が困難になったり、胼胝(べんち)(たこ)・鶏眼(けいがん)(うおのめ)が足底部にできたりします。足の変形に伴う水虫などの感染症を予防するため、足の洗い方や保湿方法、爪の切り方、患者さんに合った靴下や靴の選び方なども説明しています。

 特に靴は患者さんの悩みの一つであり、爪先が当たらないこと、足の甲が覆われていて絞め具合を調節できること、足首と靴の間の隙間が少ないことなど、靴選びのポイントを守ることにより、足の変形予防につながります。

 今回は看護師の立場でお話ししましたが、教育入院中は看護師だけでなく、さまざまな専門職が説明を行い、幅広い知識の習得が可能となります。

 近年は高齢の関節リウマチ患者さん、高齢発症の関節リウマチの患者さんが増加しており、フレイル(加齢とともに運動や認知機能など心身の活力が低下する状態)や老年症候群(加齢により全身の諸臓器の機能が低下し、さまざまな疾患が複合した状態)が重要視されています。病状は個人差が非常に大きいため、治療、介護、ケアの目標も一人一人異なっています。

 私たちメディカルスタッフは、痛みや変形のために日常生活・社会生活が困難になり、精神的不安や葛藤も大きい個々のリウマチ患者さんに対し、心理的なサポートを行い、より充実した生活をサポートして参ります。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 あさの・ゆきこ 川崎医療短期大学卒。川崎医科大学附属病院、重井医学研究所附属病院を経て2012年から倉敷スイートホスピタル勤務。18年7月より副看護部長。

(2019年03月05日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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