(8)地域包括ケアシステムの実現 倉敷スイートホスピタル地域ケアセンター 主任 新名早希子

新名早希子主任

 現在、65歳以上の人口は3千万人を超えており、国民の4人に1人が65歳以上ということになります。2042年にはその人口は約3900万人に達し、ピークを迎えます。団塊の世代が75歳以上となる25年以降、医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。

 皆さんは「地域包括ケアシステム」という言葉を聞かれたことがありますか?

 厚生労働省は、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に行われる「地域包括ケアシステム」の実現を目指しています。(図参照

 医療と介護サービスの充実を図るためには、双方がより密に連携し、柔軟に対応することが必要です。また、「住まい」とは自宅だけを指すのではなく、地域の中にさまざまな施設があり、在宅として利用できます。介護保険サービスを使える施設の機能と役割をご紹介します。

 ●介護老人保健施設

 要介護1以上の方が入居できます。管理医師がおり、リハビリテーションを必要とする方を対象に、主に在宅復帰支援を行っています。住まいという位置づけではありませんが、在宅支援を役割とした施設です。

 ●特別養護老人ホーム

 原則要介護3以上の方が入居できます。日常的な介護と生活支援サービスを必要とされる方が対象であり、終身入居が可能です。

 ●介護療養型医療施設

 医療機関に併設されていることが多く、医療ニーズの高い方の長期療養が可能であり、要介護度の高い方を中心に入所されています。ただし、23年度末に廃止される予定です。

 ●介護医療院

 18年4月から新たに誕生した施設です。医療ニーズの高い方へのケアの提供に加え、生活支援も提供します。まだ施設数は少ないですが、今後が注目されています。

 ●ケアハウス(軽費老人ホーム)

 「自立型」と「介護型(特定施設入居者生活介護)」の2種類があります。「自立型」は60歳以上で自立して生活することに不安がある方が対象です。身の回りのことはある程度できる方、軽度の介護が必要な方が入居できます。「介護型」は65歳以上で要介護1以上の方が対象です。生活支援サービスに加え、看護・介護職員による身体介護を受けられます。どちらも、所得に応じて利用料金が設定されており、比較的低い負担金で利用可能です。

 ●グループホーム

 要支援2以上かつ認知症の診断を受けた方が入居できます。1ユニット9人の施設が多く、家庭的な雰囲気で認知症のケアを受けながら、共同生活を送ります。

 ●有料老人ホーム

 「住宅型」「介護付(特定施設入居者生活介護)」「健康型」の3種類があります。「住宅型」は食事などの生活支援サービスを受けることができ、自宅で暮らすのと同様に、訪問系や通所系の在宅サービスの利用を調整することもできます。「介護付」は生活支援サービスに加え、看護・介護職員による身体介護、機能訓練などのサービスが受けられます。「健康型」は自立しておられ、介護を必要としない方が入居でき、生活支援サービスが受けられます。施設によりサービス提供方法や費用はさまざまです。

 ●サービス付き高齢者向け住宅

 高齢者が安心して暮らしていけるよう、安否確認と生活相談サービスを提供するバリアフリー構造の賃貸住宅です。「一般型」と「介護型(特定施設入居者生活介護)」の2種類があります。「一般型」は自立から軽介護の必要な状態の方に適しており、在宅介護サービスを利用することも可能です。「介護型」は看護・介護職員による身体介護を受けることができるため、重度の介護が必要な方も入居できます。施設により料金やサービスの内容はさまざまです。

 地域包括ケアシステムの実現には、住み慣れた地域でどのようなサービスが受けられるか、どんな施設や医療・介護の資源があるのかを知ることも大切です。詳しいことは、地域包括支援センターや医療機関の医療ソーシャルワーカーらにご相談ください。

 次回は「サービス付き高齢者向け住宅」について、より詳しくご紹介します。

     ◇

 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

しんみょう・さきこ 愛媛県立八幡浜高校、川崎医療福祉大学卒業。社会福祉士。倉敷廣済病院を経て2012年から倉敷スイートホスピタル勤務。2018年から現職。

(2019年03月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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