(5)心不全の診断と治療 心臓病センター榊原病院 循環器内科部長 林田晃寛

林田晃寛循環器内科部長 

 心不全とはどのような病気なのでしょうか? 一般の方へ分かりやすく伝えるために、日本循環器学会を中心に「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されました。わが国の循環器疾患の死亡数はがんに次いで第2位となっており、高齢者の心不全が増加の一途をたどっています。

 心不全は循環器系だけではなく、全身疾患であることの重要性も強調されています。腎臓病や喫煙の影響による肺気腫などの呼吸器疾患、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、貧血など心不全に影響を与える病態は多岐にわたっています。循環器系の診療だけでなく、心不全に影響を与えるこれら全身疾患の管理も大切です。

 心不全は、発症するまでの予防が重要です。最終的に心不全になるような方でも最初は症状がありません。この時期からしっかりと血圧や血糖、脂質を管理することが重要です。また、健診で心電図や診察、血液検査など何らかの異常所見があれば、早めに受診をしてください。全身を調べて、将来の心不全発症を防ぐことができるよう、病気の早期発見も行っています。

 心不全で症状が出るようになると、最適な薬を使った治療、薬以外の治療がなされているか検討を行います。また、自己管理や病態への理解を深めていただけるよう、当院では心不全を病院全体のチーム医療で診療し、多職種で支援するシステムを構築しています。

 いろいろな加療を行っても症状がとれない場合は、緩和医療や在宅医療との連携も積極的に行っています。認知症や独居の方などは病気だけでなく、家に帰ってからの生活支援が重要です。そのため、ソーシャルワーカーや、認知症サポートチームとも連携し支援を行っています。

 はやしだ・あきひろ 九州大学医学部卒。宮崎県立宮崎病院、下関市立中央市民病院、九州大病院、福岡東医療センター、川崎医科大付属病院などを経て、2014年4月から現職。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医。

(2019年04月02日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP