苦痛少ない大腸CT検査 笠岡第一病院、がん早期発見へ推奨
大腸がんのCT画像。内視鏡カメラで観察したような画像(左)と、周囲の臓器と一緒に断面を見る多断面再構成像で深部への進行の様子がよく分かる
茎のある大腸ポリープの画像。大腸を切り開いたような展開像(左)と多断面再構成像でポリープの形状を立体的に捉えることができる
宮島厚介理事長
笹井信也放射線科部長
大腸CTは通常のCT撮影装置を用いる。肛門からチューブを数センチ挿入し、炭酸ガスを注入して大腸を膨らませて撮影する。腹部を輪切りにした約千枚のエックス線像を再構成して大腸の3次元画像をつくり、ポリープの大きさや形状などをチェックする。
内視鏡と同様に腸管内をカメラが進むようなアングルで見られるほか、腸壁を切り開いたり、大腸全体を透視したりと、内視鏡ではできない視点から観察する画像も自在につくれる。内視鏡では腸壁のひだ裏や屈曲している部分は観察しづらいが、CTでは死角が生じない。
CTで識別できるポリープは直径約6ミリ以上のもので、直接見る内視鏡には劣る。隆起せず平らに広がるタイプのポリープも捉えにくい。しかし、5ミリ以下のポリープはがんになる可能性は低いとされており、笠岡第一病院放射線科の笹井信也部長は「2、3年おきにCT検査を受ければ、早期がんを見落とす危険は少ない」と説明する。
前処置の負担が軽いのも特徴だ。大腸CTでは検査日2日前から排便を促す薬を服用し、前日は残渣(ざんさ)になりにくい専用食とバリウムをとる。当日は特別な処置は必要なく、15分程度の撮影で終わる。前日に強い下剤を服用し、当日も2リットル前後の下剤を飲んで何度も排せつしなければならない内視鏡検査に比べ、大幅に苦痛が少ない。
同病院は2014年4月から大腸CTを導入し、今年3月末までに287件の検査を行った。多くの受診者は「楽に検査を受けられた」「検査後すぐに仕事に戻れた」などと評価しているという。
大腸CTを勧めるのには、集団検診などで便潜血陽性を指摘され、精密検査を受けるよう指示されても、多くの人が内視鏡検査を忌避している状況がある。早期の大腸がんは5年生存率90%以上なのに、部位別では死亡数2位。がんが進行してから治療を始める人が多いことを示唆している。笹井部長は「早期で見つけさえすれば治る時代。ぜひCT検査を受診してもらいたい」と呼び掛ける。
岡山県内の医療機関でも徐々に大腸CTが普及しつつあるが、まだ一般的ではない。時間のかかる内視鏡に対し、CTは短時間で大勢の検査をこなせるメリットもある。同病院の宮島厚介理事長は「大腸がんによる死亡を減らすには、苦痛の少ない検査法が必要。当院の健診センターのメニューに大腸CTを加えることを検討したい」と話している。
(2019年04月16日 更新)
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