GIST=消化管間質腫瘍 川崎医科大病院がセミナー

山村臨床腫瘍科医長

櫻井副理事長

 「ショーケン」こと萩原健一さんの命を奪ったGIST(ジスト)=消化管間質腫瘍は、発症率が10万人に1~2人というまれながんだ。臨床データが乏しく、診断がつくまでに時間がかかり、治療が遅れてしまうケースも少なくない。川崎医科大学附属病院(倉敷市松島)にはGISTの専門医がおり、積極的に患者を受け入れている。公開セミナーも開き、正確な診断法や最新の治療法の情報提供に取り組む。全国から訪れる患者や家族にとって、闘病の悩みを語り合う貴重な交流の場ともなっている。

信頼できる医療機関で正確な診断を
川崎医科大学附属病院 山村臨床腫瘍科医長


 GISTは消化管の壁の内部にできる。通常のがんは表面の粘膜に発生し、内視鏡で観察できるが、GISTは粘膜下の固有筋層に発生する=イラスト参照=ため、超音波やCT、MRIで見たり、針を刺して組織を調べる生検で診断しなければならない。自覚症状が出にくく、健診・検診で偶然に見つかるケースが多い。

 GISTは遺伝子の突然変異により、特定のタンパク質が異常増殖して腫瘍化する。なぜ変異が起こるのかは解明されていない。60~70%は胃にできる。十二指腸・小腸が20~30%、直腸が5%程度とされる。

 川崎医科大学附属病院では、臨床腫瘍科の山村真弘医長が診療チームのチーフを務める。3月16日に開かれた第8回のセミナーでは、山村医長が治療の第一選択肢となる手術について解説。遠隔転移がなければ、腫瘍の大きさにかかわらず適応となり「根治が可能なのは手術のみ。初発なら6~7割は治る」と話した。

 手術困難、転移や再発がある場合、薬物療法を行う。2003年に国内初の治療薬となる「グリベック」(一般名イマチニブ)が登場し、現在は「スーテント」(スニチニブ)、「スチバーガ」(レゴラフェニブ)を加えた計3剤の分子標的薬が使える。それぞれ効果が乏しくなれば次の薬に切り替える。

 腫瘍の大きさが10センチを超えるなど、初発でも再発リスクの高い患者は、手術で腫瘍を取りきっても、補助療法として「グリベック」を服用する。山村医長は「一人一人に対してどの薬を選択し、用量をどう調整するか、耐性が出てくる時期を見極めるのも重要」と指摘する。

 オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤については、今のところ目立った効果は報告されていないという。

 大切なのは信頼できる医療機関で正確な診断を受けること。山村医長は「誤った診断を下されれば望まぬ治療を受けることになる。納得できなければ、私たちの診療科などでセカンドオピニオンを利用してほしい」と呼び掛けている。

【講演】NPO「GISTERS」櫻井副理事長
仲間いること知って


 川崎医科大学のセミナーでは、GIST患者や家族らでつくるNPO法人「GISTERS(ジスターズ)」(横浜市)の櫻井公恵副理事長=千葉県=が講演した。患者だった亡き夫の闘病生活を振り返り、仲間がいることを知ってほしいと語った。

     ◇

 おとうちゃん(夫の雄二さん)が「おなかが痛い」と救急車で運ばれたのは2004年、38歳の時でした。小腸に直径20センチを超える腫瘍があり、GISTだと分かりました。聞いたことのない病名でした。

 手術後に肝臓への転移が見つかり、前年に承認されたばかりの「グリベック」を飲み始めました。日常生活に戻れましたが、吐き気、だるさ、むくみといった副作用がありました。新薬の治験に参加し、国内未承認の薬の個人輸入もしました。

 頼りになったのは、GIST患者同士が情報交換するサイトでした。病気と闘う全国の仲間とつながり、06年、茨城県で初開催されたがん啓発イベント「リレー・フォー・ライフ」に子どもたちと一緒に参加しました。その時に名乗ったチーム名が「GISTERS」です。

 おとうちゃんは再発し、10年に44歳で亡くなるまで、7年近く闘病しました。がむしゃらに頑張って延ばした命で、家族や同僚、患者仲間たちにかけがえのない時間を残してくれました。自分らしく生き抜くことができて、本人も大満足だったと思います。

 ごくまれな病気なので、日常生活では同じ病気の人とは出会いません。だからGISTERSという仲間がいることをもっと知ってほしい。いい薬もできてきました。病気とともにあってもみんなが笑顔になれる世の中に向かって、私も活動を続けたいと思います。

<サポートガイド>

 川崎医科大学附属病院 毎週火曜日の午前中、臨床腫瘍科の山村真弘医長によるGIST専門外来を開設している。受け付けは午前8時半~11時半。問い合わせは同病院(086―462―1111=代表)。セカンドオピニオンを求める場合は、主治医の了承を得た上で地域医療連携室(086―464―1567)へ申し込む。

 NPO法人GISTERS 2006年に任意団体として活動を始め、13年にNPO法人化。専用サイト(https://www.gisters.info/)の運営やセミナーの開催などを通じ、GISTに関する情報交換や患者・家族の交流に取り組む。厚生労働省に対して開発中の治療薬の早期承認を求める要望活動なども行っている。問い合わせはメールで事務局(mail@gisters.info)へ。

(2019年04月16日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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