岡山赤十字病院緩和ケア病棟開設5年 喜多嶋拓士部長に聞く

喜多嶋拓士部長

開設から5年を迎えた岡山赤十字病院の緩和ケア病棟。独立型が特徴となっている

緩和ケア病棟の個室。外にはウッドデッキを設けた

 がん患者らを対象にした岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の緩和ケア病棟が、2014年5月の開設から5年を迎えた。自宅にいるような雰囲気づくりを進めようと、一般病棟とは別棟の独立型が特徴で、年間約200人の患者を受け入れてきた。緩和ケア科の喜多嶋拓士部長(56)は「地域の医療機関との連携を一層図りながら、患者さんが自分らしく生きるための支援を続けたい」と力を込める。

 ―緩和ケア病棟の概要は。

 病棟は本館南東の駐車場跡に建設され、鉄筋コンクリート平屋約1400平方メートル。病室は特別室、有料個室、無料個室、2人部屋の4タイプで、計20床ある。約100人が収容できる多目的ホールや食堂としても使用できるデイルーム、患者・家族専用のキッチンや談話室、家族のための控室などを備えている。ウッドデッキや木目調の壁紙を多く用いるなど、落ち着いた雰囲気づくりにも力を入れている。

 ―どんな職種の人たちが働いているのか。

 医師、看護師のほか、薬剤師やソーシャルワーカー、臨床心理士、理学療法士、栄養士といった多職種にわたるチームが連携してケアに当たっている。積極的な治療(手術、放射線、化学療法)はしない半面、主に肉体的・精神的な苦痛症状のコントロールなどを行っている。

 ―「もうこれ以上治療法はないので緩和ケア病棟に…」と医師から切り出されると、「見放された」「さじを投げられた」と思う人も多い。

 緩和ケア病棟というと、一般的には「終末期」「みとり」といったイメージがある。だが、私たちの取り組みはそんなイメージとは少し異なっている。みとりを目的とした長期入院患者さんのみを受け入れるのではなく、状態が落ち着いた時には一度退院し、自宅や施設での療養をお願いしている。症状が進めば再入院はもちろん可能だし、本人が在宅療養の不安を持っていたり、家族に介護疲れがあったりする場合は「休憩室」として活用してもらうケースもある。旅立ちが迫っている人には「出発ロビー」として少しでも心地よく過ごせるよう心掛けている。開設当初からのコンセプトである「患者さんと家族が望む場所で、大切な時間をその人らしく生きることを支える」ことを実践すべく、日夜頑張っている。

 ―地域との連携も重視していると聞く。

 安心して一時退院してもらうために、地域の一般病院、診療所、訪問診療、介護施設などと連携を緊密に図っており、切れ目のない支援に当たっている。

 ―これまで大切にしてきたことは。

 スタッフのレベルアップを常に考えてきた。緩和ケアに必要なのは、施設を設けることだけではなく、ソフト面の充実だ。ケアを行うスタッフにスキルや気持ちが備わっていなければ医療付きホテルになりかねない。緩和ケア病棟のスタッフは患者さんと接する時間は長いだけに「この人はどうしたいのか」「何が苦しいのだろうか」など、気持ちに寄り添った行動が重要になる。スタッフ全員がこれからもホスピスの心を忘れることなく、患者さんの支えになっていきたい。

 きたじま・たくじ 岡山操山高校、順天堂大学医学部卒業。岡山大学病院、愛媛県立中央病院、尾道市立市民病院などを経て、2010年から現職。

(2019年06月17日 更新)

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