「障害年金」制度の内容を本で紹介 出版の社労士・中川さんに聞く

出版された本を手に「重いけがや病気になった時、障害年金のことを思い出して」と呼び掛ける中川さん

 「障害年金」と聞いて、どのような制度か答えられる人はどれくらいいるだろう。身体的障害に対する公的支援と誤解されがちだが、二人に一人がかかるとされるがんをはじめ、うつ病、糖尿病など、対象になる可能性がある病気は幅広い。社会保険労務士で、共著「マンガで分かる! 障害年金」(日本評論社刊、1512円)を出版した中川洋子さん=岡山市=に制度の概要や課題を聞いた。

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 ―障害年金に関する本は3冊目になる。

 「『障害年金というヒント』(2014年)、『障害年金というチャンス!』(16年)は計約10万部と好評でした。3冊目は制度の改正点を盛り込みつつ、『より多くの人に知ってもらいたい』と、親しみやすい漫画にしました」

 ―障害年金とはどのような制度なのか。

 「原則65歳未満が対象で、けがのほか、がん、うつ病、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病といった病気も状態によっては受給できる可能性があります。年金事務所に自分から請求する必要があります。年金額は自営業などの国民年金加入者が対象の障害基礎年金で、重度の1級が月約8万円、2級は約6万円。サラリーマンの厚生年金は、これに報酬比例分が加わります」

 ―問題点は?

 「まず制度が知られていないことですね。私は10年ほど前から障害年金の申請を仕事で扱っており、最近は年間100件近い件数を請求しています。それでも対象になる可能性があるのに、『知らないから手続きをしていない』という人が多い印象です」

 ―受給要件についても、厳しい面があるようです。

 「病気やけがで初めて病院に行った日(初診日)に年金制度に加入している▽一定以上の年金を納めている▽障害の状態が一定以上である―の三つの要件があります。このうち初診日に関する要件のハードルが高いですね。障害年金の対象となるような状態と診断された日ではなく、初診日。精神疾患、糖尿病などでは、カルテの保存期間(診療が終わってから5年間)を大きく超え、十数年以上も前にさかのぼることがあります。第三者の証明が参考資料になるよう制度改正されましたが、いまだにこの要件で苦労する人が目立ちます」

 ―障害の状態が一定以上の目安はありますか?

 「病気の種類によって分かれており、一概に言うのは難しいですね。例えば2級なら、食事、洗濯などに介助が必要かどうか、労働による収入が得られるかどうかといった状況が判断材料になります。ただ個々のケースで違うため、専門家に確認してください」

 ―誰もが対象になる可能性があります。

 「私たちは、元気な時に保険料を支払って年金受給者を支えています。障害年金は、自分に元気がなくなった時、支えられる側になるということです。多くの人が、重いけがや病気になれば精神的に不安になるし、経済的にも厳しくなるでしょう。障害年金は、生活の基盤を整える助けになるので、制度を知り、いざという時に使えるように覚えておいてほしいですね」

(2019年06月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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