(3)不整脈について 岡山赤十字病院 循環器内科副部長、不整脈部門長 田中正道

田中正道副部長 

 心臓は、心電図検査で活動を記録することからも分かるように、電気で動く臓器です。右心房にある洞結節(どうけっせつ)という部位からの電気信号によってリズミカルに拍動する仕組みです。

 詳しく説明すると、洞結節から発生した電気は、心房と心室の間にあり関所の役割をする房室結節を通って心室側に伝わります。電線のような構造がある心室全体に電気が流れることで、心筋細胞が収縮し、全身に血液を送り出すポンプの役目を果たしています。洞結節は自らの“ペースメーカー”と言えますね。

 房室結節が関所の役割をしているため、一般的には心房の不整脈は危険ではありません。心室性不整脈が致死性不整脈と呼ばれます。発作時にはAED(自動体外式除細動器)などで治療が必要になる可能性が高いです。

 心電図の波形(図1)を見てください。洞結節からの調律を洞調律と呼び、それ以外が不整脈ということになります。診断名としては、心房の不整脈には、洞不全症候群▽房室ブロック▽心房期外収縮▽心房頻拍▽心房粗動▽心房細動▽発作性上室性頻拍―など。心室の不整脈には心室期外収縮▽心室頻拍▽心室細動―などがあります。

 不整脈にはタイプがいくつかあります。まず脈が遅くなる「徐脈性不整脈」の治療は最終的にはペースメーカー植え込みの判断を検討することになり、脈が速くなる「頻脈性不整脈」は内服治療、カテーテルアブレーション、危険な心室性であれば植え込み型除細動器の使用を検討します。

 不整脈診療に関わる医療機器の進歩も目覚ましいものがあり、失神の診断で不整脈の関与を調べるための植え込み型ループレコーダー、感染のリスクが少ないリードレスペースメーカーなどが使用できるようになっています。ペースメーカー、植え込み型除細動器は磁気共鳴画像装置(MRI)対応となっており、植え込み後も全身のMRI検査が可能です。

 今は植え込み型ループレコーダーやペースメーカー、植え込み型除細動器がインターネットにつながり、自宅にいながら不整脈や機器の異常をモニタリングできます。緊急時には自動的にメールで病院に連絡が入る仕組みで、より早い対応が可能となっています。

 不整脈治療の一つ、カテーテルアブレーションをご説明します。簡単に言えば、不整脈の原因となっている組織を高周波エネルギーで焼灼(しょうしゃく)し、不整脈を根治することができる治療です。例えば心房粗動であれば、右心房の回路の一部となっている部分にブロックラインを作成すれば根治することができます(図2)。

 似た名前ですが心房細動では、左心房に開口する肺静脈の電気が左心房に流れないよう、肺静脈を隔離するよう焼灼して治療を行います。実際に治療を行うときは、焼灼した位置の確認や、食道など他の臓器への影響を少なくするため、超音波やコンピューター断層撮影(CT)で心臓の3D画像を作成し、使用しています(図3)。心臓の手術にはなりますが、カテーテルアブレーションのみであれば当院では最短で1泊2日で退院可能です。

 動悸(どうき)を自覚した場合や、健診で心電図異常を指摘された場合は放置しないことが重要です。診断・治療の選択肢も増えていますので、一度循環器内科を受診し、危険な不整脈かそうでないのかをきちんと調べるようにしましょう。

     ◇

 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 たなか・まさみち 岡山大学医学部卒。茅ヶ崎徳洲会総合病院、愛媛県立中央病院、岡山大学病院などを経て2013年4月より岡山赤十字病院勤務。日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、日本不整脈学会専門医、医学博士。

(2019年07月01日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP