(5)おいしく食べて健康寿命をのばそう! 岡山済生会総合病院 栄養科管理栄養士 坪井里美

坪井里美栄養科管理栄養士

 糖尿病の食事療法は単なる制限ではなく、何を、いつ、どう食べるかがポイントです。しっかり動かせる体を維持するためには“食べ過ぎ”だけでなく“控えすぎ”にも注意が必要です。旬の食材を取り入れ、おいしく楽しく食べながら健康寿命を延ばしましょう。

■糖質の過不足を見直す

 三大栄養素(糖質・タンパク質・脂質)のうち、血糖値に最も影響するのは糖質です。そのため糖質制限が昨今の話題となっていますが、主食はゼロにしてもお菓子がやめられない方に時々出会います。一番に見直すべきはお菓子、ジュース、アルコール飲料などの単純糖質(砂糖やブドウ糖、果糖など)です。

 単純糖質は血糖値を速く上昇させます。これに対し、血糖値をゆっくり上げる糖質を複合糖質といいます。複合糖質は穀類やいも類、豆類に含まれていて、ビタミンや食物繊維など身体に不可欠な栄養素も含んでいるのが特徴です。

 糖質は体を動かすエネルギー源であり脳の主要なエネルギーでもあるため、控えすぎは好ましくありません。主食を中心に糖質を一定量摂取することは、副食からの塩分・脂肪を抑えることにもつながります。一方、ラーメン&チャーハンのように糖質中心のメニューは見直しが必要です。「1日の目安量」を参考に、自分に適した量をとりましょう。

■肥満より怖い「サルコペニア肥満」

 加齢や運動不足などの影響で筋肉が急激に減ってしまう状態を「サルコペニア」、これに肥満が加わったものを「サルコペニア肥満」と呼びます。運動不足でいると筋肉が衰えて細くなっていくだけでなく、寝たきりの原因にもなります。早ければ40歳代の若い人でもサルコペニア予備群となっている場合があります。予防には筋肉を落とさないための運動と、タンパク質食品(魚・肉・卵・大豆製品・乳製品)を毎食摂取するように心がけます。

■油脂は適度に

 油のみでは血糖値への影響は少ないのですが、料理として摂取することで食後の血糖値上昇に影響を与えます。揚げ物など油の多い料理をたくさん食べると高血糖状態が長く持続するため、動脈硬化進行の要因となります。

 最近では、不飽和脂肪酸が動脈硬化などの予防効果を期待されて注目を集めています。特に魚油成分のEPA・DHA、えごま油、亜麻仁油などのn―3系不飽和脂肪酸が注目されています。糖尿病との関連では、魚介類の摂取が多い男性ほど糖尿病になりにくいという研究結果も報告されています。具体的には、サケ、アジ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギなどです。玉ねぎと旬のトマトを使用した夏向きのさっぱりレシピをご紹介します。

■食べ方を工夫して食後高血糖を予防

 食事の最初に食物繊維を多く含む野菜料理から食べる「ベジタブルファースト(ベジ・ファースト)」はご存知でしょうか? 野菜、キノコ、海草をたっぷり使った料理が毎食1~2品はあるか確認してみましょう。

 次にタンパク質や脂質を含む魚・肉料理などを食べてインスリンの分泌を促す準備をします。血糖上昇に対する体の準備が完了したら、最後にご飯などの炭水化物(糖質・食物繊維)です。よくかみ、時間をかけて食べるように意識しましょう。

 また、朝食をきちんととることで「セカンドミール効果」が期待できます。セカンドミール効果とは最初にとる食事が、次にとった食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響を及ぼすという概念です。朝食をバランスよく食べることで、昼食後の血糖値を抑える効果が期待できます。朝食から野菜料理を食べる習慣は大切にしたいですね。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 つぼい・さとみ 倉敷天城高校、ノートルダム清心女子大学人間生活学部食品栄養学科卒。2003年から岡山済生会総合病院に勤務。日本糖尿病療養指導士、腎臓病療養指導士、病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士。

(2019年08月05日 更新)

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