高齢者の骨折 寝たきりの原因に 最新治療法や注意点聞く

「骨折の治療は手術とリハビリをセットで進めていくことが大切」と話す木浪主任医長

 転倒による骨折は、寝たきりの原因で上位を占める。骨を丈夫にし、筋力を保つことで、立ったり歩いたりという移動機能が低下する「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」(通称・ロコモ)を予防することが大切だが、もし、骨折してしまったらどうするか。岡山市立市民病院整形外科の木浪陽主任医長(47)に、最新の治療法や日常生活での注意点を聞いた。8日は「骨と関節の日」。

 ―厚生労働省の調査では、寝たきり(要介護5)になる原因の1位は脳卒中、2位が認知症、転倒による骨折が3位で続く。

 高齢者の転倒による骨折で多いのは手首、肩、腰、股関節の4カ所。特に問題なのが、「大腿(だいたい)骨近位部骨折」と呼ばれる股関節の骨折だ。骨粗鬆(しょう)症財団の調査では、全国で2012年に年間約17万人の患者が発生しており、20年には年間20万人を超えるとされる。日本整形外科学会の調査では、男女比は1対3・5で女性が多く、7~8割が自宅内で転倒した事例とみられている。

 太ももの付け根である大腿骨を骨折すると、しばらくは痛みで寝返りも打てなくなる。そんな状態が続けば、筋力が落ち、再び歩くのが難しくなってしまい、そのまま寝たきりになるケースも少なくない。

 ―大腿骨を骨折すると、どんな治療をするのか。

 手術をするか、しないか―の選択になる。持病や生活状況を考慮して決める。手術は、リハビリとセットで考えないといけない。金属製の髄内釘(ずいないてい)やプレートで骨を固定する「骨接合術」や、骨を金属に置き換える「人工骨頭(関節)置換術」などを行い、手術後はできるだけ早く、立ったり、歩いたりといったリハビリを始める。

 手術をすれば、骨折する前と同じように歩けるようになる可能性は筋力次第で十分にある。ただ、自宅に戻っても転倒しない工夫が必要。例えば、介護保険を使って手すりを付けることもできるので、ケアマネジャーにどんな支援が受けられるかを相談してほしい。

 ―骨折の治療の際、骨粗しょう症と診断されるケースもあると聞く。

 女性はホルモンの影響で、閉経後に骨量が減ってしまう。骨粗しょう症の治療を行うことは、骨折の予防につながるだろう。折れにくい骨をつくるには、骨密度低下(カルシウムが減少)と骨質低下(コラーゲンが老化)の両方を予防することが大切だ。

 骨粗しょう症は近年、内服薬に加え、注射による治療もある。主治医と相談し、自分に合った治療を受けてもらいたい。骨折を防ぐには筋肉を丈夫にすることも重要。椅子を使ったスクワットや膝の曲げ伸ばしなど自分にできる運動をこつこつ続けるのがよい。



 岡山県整形外科勤務医会などは13日午前10時~正午、岡山市北区駅元町の県医師会館三木記念ホールで「骨と関節の日」にちなんだ講演会を開く。

 岡山大整形外科の尾崎敏文教授がロコモについて解説した後、木浪主任医長が「大腿骨近位部骨折とロコモティブシンドローム」と題して話す。足腰を鍛える体操の実践もある。

 無料。先着300人。問い合わせは岡山大運動器スポーツ医学講座(086―235―7273)。

(2019年10月08日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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