岡山大大学院 医療者が対話カフェ 20年度、臨床実習導入目指す

車座になって「信じるってどういうこと?」をテーマに話し合う医師や薬剤師、学生ら。医療の科学的根拠を問う議論などが2時間以上続いた=9月23日、岡山大病院

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科総合内科学教室(岡山市北区鹿田町)は、医療者の対話力を磨くユニークな自主講座「哲学カフェ」を開き、成果を上げている。来年度にも、正式なカリキュラムとして臨床実習への組み入れを目指している。

 複雑な治療法や予後の説明など、患者との対話が重要な場面は多いが、これまでの医学教育は診察時の態度や質問すべき項目の習得など技術面が中心だった。同教室はきちんと患者の話を聞いて信頼関係を築く対話の実践をより重視し、そのトレーニングとして哲学カフェを導入した。各地で哲学カフェを開いている団体「カフェフィロ」副代表の松川絵里さん=岡山市北区=に進行役を依頼し、昨年11月からこれまでに4回開催した。

 十数人の参加者は岡山大の若手医師や看護師、学生だけでなく、県内の薬局で働く薬剤師らも加わり、地域医療のレベルアップも狙いの一つだ。

 対話のテーマは毎回一つだけで、「理想の死ってある?」「信じるってどういうこと?」といった正解のない抽象的な問いを投げかける。発言は自由で、聞いているだけでもかまわない。

 9月の第4回に参加した医学部4年生の男子学生(28)は「考えが違う人に対しても否定的にならず、自分の経験と照らし合わせて共感できた」と話し、医師になったら、自分から患者に話しかけるべきだと思ったという。

 来年度以降、まず総合内科学の臨床実習で、哲学カフェに基づく対話プログラムを実施する計画。実習を担当する同教室の小比賀美香子講師は「医療者は原因が分からない症状や難治性の病気を持つ患者さんとも向き合い、語りを受け止めることが求められる。患者さんと共に考え続ける力を養いたい」と話している。

 哲学カフェ 飲み物を手にした参加者が、進行役が示すテーマについて対等な立場で話し合う集い。哲学の専門知識は必要とせず、問題の解決や合意形成ではなく、対話そのものを目的とする。1992年にパリのカフェで始まり、日本でも99年頃から各地のカフェや公民館、教育機関などを会場に、さまざまな形で開かれている。

(2019年10月28日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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