新出生前診断 身近な施設で希望 岡山大大学院教授ら妊婦意識調査

 妊婦の血液でダウン症などの胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断(NIPT)」について、妊婦の多くが身近な医療機関で検査を受けられるよう望み、拡大にはカウンセリング体制の確保が欠かせないと考えていることが、岡山大大学院の中塚幹也教授(生殖医療)らによる意識調査で分かった。

 NIPTの実施は、カウンセリング体制が整った認定施設に限定されているが、カウンセリングをせずに結果だけを知らせる認定外施設の存在が問題となっている。現状についての妊婦らの考えを知るため、2018年5~9月、岡山、広島県の2病院の産科外来を受診した出産前の妊婦182人を対象に調査した。

 両県で認定されているのは岡山大病院(岡山市)、広島大病院(広島市)、中電病院(同)のみ。自分が通っている病院や医院で受けられるようにすべきか尋ねると、17・6%が「思う」、54・4%が「どちらかといえば思う」とし、合わせて7割超が実施施設の拡大を望んだ。「思わない」は3・8%、「あまり思わない」は15・9%だった。

 どこで行ってほしいか複数回答で聞くと「どこでも受けられるようにしてほしい」が46・4%で最多。「一般の産婦人科医院・病院」36・9%、「大学病院の産婦人科」33・9%、「総合病院の産婦人科」31・5%と続いた。「認定施設」は3・6%だった。

 NIPTの検査への理解を深めてもらう遺伝カウンセリングについては81・9%、陽性反応が出た際の心のケアなど心理的カウンセリングは80・8%が「必要」とそれぞれ答えた。

 調査では、NIPTで陽性反応が出た場合の対応も聞いた。診断確定のための羊水検査を「受ける」としたのは73・6%。「受けずに妊娠を継続する」は13・2%。「受けずに妊娠を諦める」との回答も3・8%あり、確定的でないNIPTの結果だけで中絶を選びかねない状況も浮かんだ。

 認定施設は中四国各県にあるが、全国的には存在しない県が10余りあり「認定施設をある程度は拡大していく必要がある」と厚生労働省。新出生前診断の在り方を検討するため、有識者会議を立ち上げ、21日から議論をスタートさせた。

 中塚教授は今回の調査結果を踏まえ、国主導による今後の議論について「妊婦とその家族に対し、NIPTや羊水検査についての十分な説明や精神的なケアが担保できるかどうかが重要な論点となる」と指摘している。

 新出生前診断 妊婦の血液に含まれている胎児のDNAを調べてダウン症などを引き起こす3種類の染色体異常を調べる検査。妊婦をサポートする専門スタッフがいるなど、日本産科婦人科学会(日産婦)の指針に基づいて体制を整えた約90の認定施設でしか検査できないが、それ以外の施設が実施しても罰則はない。

(2019年10月30日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

カテゴリー

関連病院

PAGE TOP