(2)緩和ケアチーム 倉敷中央病院精神科部長 小高辰也

患者やその周囲の人たちが「その人らしく」穏やかに過ごせるよう、カンファレンスで話し合う緩和ケアチームと病棟の医療スタッフ

 がんや慢性心不全、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの病気にかかると、痛みや息苦しさなどの身体の苦痛、不安や抑うつなどの心の苦痛、仕事・家庭における問題、経済的な問題など、さまざまな困難に患者さん本人が直面し、また患者さんの家族も思い悩みます。これらの苦痛をやわらげ、患者さんやその周囲の人たちが「その人らしく」穏やかに過ごすことができるようにサポートするのが「緩和ケア」です。

 緩和ケアという言葉を聞くと「もう治療ができないということだ」「末期における治療やケアだ」と考える方は少なくありませんが、現在は病気が早期であっても治療の途中であっても、さまざまな苦痛に対処していくことが重要であると考えられています。痛みや不安などの苦痛が大きいと、治療への意欲がわかず、適切な治療の機会を逃してしまうことなどがあるからです。緩和ケアは治療を充実させるためのケアとも言え、緩和ケアを受ける時期に「早すぎる」も「遅すぎる」もありません。

 患者さんを担当する主治医や看護師が提供する緩和ケアだけでは、それらの苦痛や問題の全てに対応することが難しい場合があります。そのような時に緩和ケアチームが支えとなります。緩和ケア科、精神科、麻酔科などの医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、作業療法士、臨床心理士、管理栄養士、歯科衛生士がメンバーとなり、それぞれの専門知識や経験をもとに治療や支援、助言を行っています。

 具体的な活動内容としては、主に以下のものがあります。

 【1】患者さんが入院している時に、担当する主治医からの依頼を受けて、痛みや不安などの症状に対し直接治療を行う。または主治医へ助言する。家族など周囲の人たちへの支援を行う。

 【2】主治医や医療スタッフからの依頼の有無にかかわらず、緩和ケアへのニーズが多い院内の病棟を定期的に訪れ、職員に助言する(間接支援)。

 【3】「緩和ケア外来」を開き、通院患者さんへの治療・ケア・支援などを行う。

 【4】入院から在宅へ療養場所が移って福祉サービスなどが必要となる時、または当院から別の病院へ転院する時などでは、ソーシャルワーカーが中心となって他施設と連絡をとり、必要なサービス・ケア・治療が途切れることなく受けられるようにする。

 【5】当院の緩和ケア病棟への入院に関する相談に対応する。

 【6】緩和ケアに関する情報発信、患者さん向けのパンフレットを作成する。

 これらの緩和ケアチームの活動の中で、精神科医の果たす役割としては、不安や抑うつ、不眠などの症状に対し、必要に応じて臨床心理士や看護師などと協力しながら治療やケアを行うことです。また、身体状態の変化などに伴って起こる「せん妄」(急な寝ぼけのような症状)に対応することも多いです。

 時には「生きる意味」について問われたり、家族間のトラブルなどについての相談を受けることもあります。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 こたか・たつや 岡山大学病院、広島市立広島市民病院、府中市立湯が丘病院などを経て、2008年より現職。日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医。

(2019年11月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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